「大義」への共感が240億円事業へ

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(上)小野恭裕氏は新製品の設計について、ノートに電気回路の構造を記したスケッチを描いて、アイデアを練る。写真は掃除機のバッテリー配置を検討したときのメモ。 (下)※GfKJapan調べ「全国有力家電量販店の販売実績集計(口金E17/ E26LED電球)」

大山常務から「むちゃ振り」を受けた小野は、プロジェクトマネージャーとして全体を統括しながら、主に電源の開発を担当。筐体の開発は、奥村明彦マネージャーが担当した。

電源は、中国のメーカーに発注したが、発熱の処理が問題となった。LED電球の売りは10年という長寿命。だがLED素子は光るときに熱を出す。熱を効率よく逃がさなければ、コンデンサーや半導体などの部品の寿命が縮まったり、基板の接合部がひび割れたりする。どのように設計すれば、熱の影響を最小限に抑えられるか。小野は狭い電球の内部を彷徨い続けた。

筐体では、アルミニウムの成形が問題となった。素材に圧力をかける「押し出し」は、仕上がりは滑らかだが単価が高い。一方、アルミ板を回転させて成形する「へら絞り」は生産性が低い。最終的に、複数の金型を使って徐々に成形していく「順送プレス」を採用したが、割れや傷との闘いが延々と続いた。

2009年の暮れ――。

「LED事業の命運が3月発売にかかっているのはわかっていましたが、年末になってもまったく先が見えない。私は発売がずれ込んだり大量に不良が出るようなら、会社を辞めようと決心しました。奥村も『そうなったら、俺も一緒にやめるよ』と言ってくれました」

腹を括った小野と奥村は、「2500円、3月発売」ラインを死守するために、異様な情熱を燃やし始める。追い込みの時期には「納品が間に合わない」という中国メーカーに直接乗り込み、現地の社長と膝詰めで交渉しながら、遅れの原因を1つずつ突き止めていった。なぜ、そこまでやれたのか。

「やはり、トップの言う大義に納得感があったからです」

かくて2010年3月、アイリスオーヤマは2500円という破格の価格でLED電球を発売。その後も他社を寄せつけない価格を打ち出し、メガヒットを記録した。現在、同社のLED照明事業は240億円(12年度)にまで成長している。

前職では研究所勤務だったこともあり、納期ともコストともほぼ無縁の仕事をしていた小野。ギリギリセーフのバカ売れに、いったい何を感じただろうか。

「そりゃもう、やったー! のひとことですよ」

五十男のガッツポーズが、眩しかった。

(永井 浩=撮影)
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