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FWBには、40度のお湯に触れるとふにゃふにゃとくずれるセンサー分子が入っている。メークの下にFWBを塗っておくと、お湯で洗っただけで、ピタッと密着していたメークも浮き上がって落ちる。(図は資生堂「新製品説明会」資料より)

長野さんは、現在の部署に異動になる前は、研究所で製品開発に携わっていた。研究所からの異動は、同社では稀だという。FWBのもう一人の開発者である川上登美子さん(現在は他部署に異動)も、長野さんと同じく研究所出身。たまたま同時期に「稀な」異動が重なった2人は、つねづね「技術を活かした商品開発をしたいね」と話していた。理論的には、一定の温度と水に反応するセンサー分子を開発することは可能なはず。そこで40度のお湯で反応するセンサー分子の開発を研究所にオーダーした。

「人間の体温と同じ36度では、汗をかいたとき化粧が落ちてしまう。42度では熱いと感じる人もいる。お風呂に入ってすぐ化粧を落とせるように、40度という温度にこだわりました」

FWBを使えば手ぶらで風呂場に直行できる。会社帰りのジムや温泉旅行にも、クレンジング剤を持っていく必要がないと、ユーザーからは大好評。

「特に小さい子供を持つお母さんから、これまでおろそかにしていた化粧落としが、子供と一緒にお風呂に入っている間にできてストレスが減ったという感想をいただき、この商品を開発してよかったと思いましたね」

お客さんが何を望んでいるか、その気持ちの奥に何があるのかを理解して、それを商品で表現し、お客さんに共感してもらえれば、必ず手に取ってもらえると長野さんは言う。例えば長野さんの最新作の一つに、リニューアルした男性整髪料「ウーノフォグバー」がある。ヘアワックスほどしっかりスタイルをつくり込むのではなく、霧状のスプレーでさりげなく格好いいスタイルがつくれるのが特徴だ。ターゲットは今まで整髪料を使ったことがない中学生男子。

「僕自身がそうだったんですが、思春期になってモテたいという意識が出てくると、ちょっと整髪料でも使ってみようかなと思う。でも学校で『あいつカッコつけてる』と言われるのはたまらなくイヤ。そんな微妙な心理を突いた商品です」