抜本的な解決策は雇用の流動化
実はこれら生産性のデータを見ていく際には注意が必要で、門倉さんは「労働統計は基本的にサンプル調査に基づき、就業者数自体かなり曖昧な数字。それに“第二就業”の問題もある。米国では副業を持つ人が多いのに、彼らは1人としかカウントされず、実際の就業者はもっと多いはず」という。つまり米国の生産性は過大評価されている可能性が高いのだ。
しかし、その差は大きくて埋めがたい。そんな日本の生産性の低さの要因の一つとして永濱さんが指摘するのが、図10に見る管理職、事務職といったホワイトカラーの過剰感だ。「バブル期に大量採用した人材を、終身雇用・年功序列で管理職に昇進させてしまった。その結果、生産性の低いマネジメント層が社内に滞留し、そのツケが過剰感として表れている」という。
でも、なぜ事務職まで過剰な状態になってしまうのか。人材コンサルタントの深瀬勝範さんは、「マネジメント層は自らの存在価値をアピールするために、わざわざ新しい仕事をつくって、周囲の人間を増やそうとする傾向が強い。その最たる例が、成果主義やワークライフバランスなどの課題を見つけては仕事を増やし、気がついたら肥大化していた人事部門だ」という。
そうしたホワイトカラーの生産性をアップする方法として深瀬さんは、たとえば人事部門が成果主義的な人事制度を構築したのなら、その制度に対する「値付け」を経営層や現場が行って購入する形をとることを勧める。実際にお金が動くわけではないが、評価を受けることで、生産性に対する人事部門の意識向上が期待できるからだ。
そして、抜本的な解決策として永濱さんと門倉さんが口を揃えるのが、「解雇規制の緩和による雇用の流動化」である。確かに一時痛みをともなうが、長期的には適材適所が進むことで全体の生産性がアップし、一人ひとりが潤う。あなたはこの厳しい現実を真正面から受け止められるか。