旧第一勧業銀行で主に企画・人事畑を歩んだ作家の江上剛さんは、銀行本部でさまざまな会議を仕切ってきた経験から「会議は極力少なく、短く。時間を区切ることも大切です」と断言する。

それでも話題が拡散するとか、紛糾することは避けられない。どう収束すればいいか。

「会議にも『結論を出す会議』と『結論を出さなくていい、ガス抜きのような会議』の2種類があります。後者なら、みんなに一通り意見を出させればいいわけです。しかし、ある一定の結論は出さなければならない。そういうときに避けなければいけないのが、強引に結論へ持っていこうとすることです。『結論ありき』の印象を持たれてしまい、『それなら会議をする必要はなかったじゃないか』と噛みつかれるおそれがありますから」

大組織ならではの“作法”がそこにはある。

「会議を進めるなかで、自分たちが意図している方向へ意見が集約できるように布石を打ち、流れをコントロールすることが大切です。具体的には、自分たちの意図に賛成してくれそうな意見をチョイスしながら、その代表的な意見を集約して紹介する。それによって流れをつくるということです」

一方、ダラダラしているように見えても「まとめてはいけない」場合がある。たとえば、革新的な事業に乗り出すようなとき。

「積極的な賛成者、積極的な反対者だけではなく、社内の大半は勝ち馬に乗ろうとしているだけの中間層です。彼らには、どんな意見であれ、とにかく発言させておくこと。それが失敗したときの『保険』になるからです。新しいプロジェクトに成功の保証はありません。提案者は失敗したら責任を被ります。でも、中間層は『だから失敗するっていっただろう』と逃げることができる。彼らに逃げ道を用意しておけば、企画を通しやすくなるのです」

江上さんは苦笑いしつつこう話す。

ときには正論をかざすより、実利を取る思慮深さが必要なのだ。

【○】言葉ではわかりにくいので、 ホワイトボードに図解してもらえますか?
【×】いろいろとご意見が出ていますが、表記のとおりの結論とさせていただきます。

ネクスト社長
井上高志
1968年、横浜生まれ。青山学院大学経済学部卒業後、リクルートコスモスに入社。97年にネクスト設立、現職。同社は2006年、東証マザーズ上場(現在は東証1部)。
 
作家
江上 剛
1954年、兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、第一勧業銀行に入社。2002年に『非情銀行』で作家デビュー。近著に『55歳からのフルマラソン』など。
(永井 浩、ミヤジシンゴ=撮影)
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