部下が自然に活躍する環境を創り出せ

危機の時、対策がわかっていても「どうせこのリーダーに提案してもムダ」と周囲から思われていれば何のアイデアも部下から出てきません。やる気のなさや、アイデアや創意工夫のなさは、言葉を変えればリーダーや上司の魅力不足といえるかもしれないのです。

魅力という言葉でなければ、上司が「部下が頑張ってみたいと自ら思う」環境を創り出していないと捉えることもできるでしょう。

厳しい上司が部下を監視していても、勤務時間ずっと張り付いていることはできず、一人の部下に監視がつかなければ業務レベルを高めることができないのは、はっきり言って極度の非効率さです。したがって、部下が自ら目的意識を高め、やる気をもって仕事に取組み、チーム全体で勝利へ向けて自然に一致団結する形にするほうがよほど健全です。

孫武は呉の軍師として楚に勝利し、周辺国家ににらみを利かせるほどの強国を創り上げたのですが、君主が二代目になったことで呉の将来に見切りをつけ、被害が自分に及ばない時期に姿をくらましてしまいます。伝説として兵法書を書き記すために隠棲したとも言われていますが、自分の君主が暗愚であることで、将来の悲劇を予想していたのでしょう。

会社が傾けば、優れた能力を持つ社員ほど早く離れていくことは、現代のビジネスにも共通する現象です。優れたアイデアが部下からどんどん上がってくるか、誰もが黙って下をむいて、この上司じゃダメだよねと内心で匙を投げているのか。

部下が自然に全力を発揮したいと思い、勝利に向けて一致団結できる環境を作るリーダーの指揮する軍こそが勝利を収める。古今東西、2500年の昔から不変の組織原則を『孫子』は指摘しており、だからこそあらゆる時代で勝者を支える最高の戦略書であり続けたのです。

【関連記事】
なぜ、できない人ほど自分を過大評価するのか
優秀な人材が働きたいと思う会社はどこがすごいか
なぜか苦境を跳ね返す人、飲まれてしまう人
部下を伸ばす課長はどこが違うか
なぜ、チームワークは分担作業に勝るのか