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感謝の言葉をどう使い分けるか

気をつけなければならないのが、言葉のつかい分け。たとえば、感謝を伝える場合の「ありがとうございました」と「ありがとうございます」について平さんは次のように状況に応じてつかい分けている。

相手との距離が3メートル以上の場合なら「ありがとうございました」。店を出て歩きはじめた客の背中に向かって大きな声で挨拶する。思わず振り返った客の目には深々とお辞儀をする従業員の姿が映る。

「離れていて会話ができないなら『ありがとうございました』と断定して見送ります。お客さまへの感謝をお辞儀で示すのはもちろん、ハッピを着て大きな声で挨拶して頭を下げるから、道行く人へのアピールにもなります」

一方「ありがとうございます」をつかうのは、相手の顔がこちらに向いていて距離が2メートル以内の場合。

「『ありがとうございます』のあとに言葉を繋げば、距離が近く顔が見えるから会話を続けることができるんです」

たとえば「本当にありがとうございます」と挨拶したあとに「奥さまにもよろしくお伝えください」と続けるとこんなふうに会話が広がる。「うちの女房知っているの?」「いえ、指輪をされているからご結婚されているかと思いまして」……。

「心からの『よろこんで』が日本中に広がってほしい」と平さんは語る。

「マニュアル化された言葉では、お客さまと人間関係を築き、お店のファンになってもらえるような会話はできません。大切なのは、返事が返ってくるような挨拶を心がけることなんです」

大庄 研修センター長 平 博 
1948年、新潟県生まれ。68年東京・大田区で兄の平辰(現・会長)と創業。76年法人化、94年株式を店頭公開、99年東証一部上場。30年間で約1万人の社員を育てる。『マニュアルなんかじゃ人は育たず』など著書多数。
(佐藤 類=撮影)
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