「庄や」は100店舗を展開するまで13年かかったが「やるき茶屋」は7年で達成。その半面、平さんのもとに客からこんな声が届くようになった。「心がこもってないのに『はい、よろこんで』なんていわせるんじゃない」「うるさいだけだ」……。
その原因を「言葉のマニュアル化」と平さんは指摘する。
「『はい、よろこんで』を早口でしかも怒鳴るように叫ぶと『へこんで!』に聞こえてしまうんです。ゆっくりしっかり発音しないと、おもてなしの心は伝わりません」
大庄の営業の神髄ともいえるその言葉の意味や理念を理解しないで、上司や店長にいわれるがまま口にする。あるいは、ルーチンから生じる慣れが、問題なのだという。
「お客さまの目を見て『はい、よろこんで』といったあと、状況に合わせて『すぐにやらせていただきます』『お伺いします』と続ければ、お客さまだって気持ちがいいはず。しかもお客さまの状況に思いを巡らせていれば、自然にゆっくりと話すことになる。結果的に『よろこんで』という言葉がより活きるんです。そこからお客さまとのコミュニケーションがはじまります」
「よろこんで」のほかに客とのコミュニケーションを円滑に進める言葉として平さんが勧めるのが「助けてください」、そして「教えてください」と「勉強になります」。
「○○を食べていただけませんか」と直接的にいうよりも「助けていただけませんか」といったほうが「どうしたんだ?」と会話のきっかけになりやすい。また客の言葉に対して「教えてください」「勉強になります」と受け答えするとかわいがられるという。