「Aさん」よりも「鈴木さん」の効果
「名前ほど物語に真実味を添えるものはない。逆に、匿名ほど非現実的なものはない。主人公に名前のない小説を考えてみるがいい」
本当の名前を使い、人物を登場させることで、聞き手はよりその話を魅力的に感じ、関心を持つに値する成分が存在することになる。本当にあった話なのだからだ。もし、登場するのが偉人でなく、たとえ仮名で「鈴木さん」だったとしても、よく「ある女の人」や「Aさん」というどこか曖昧でボヤケタ言葉よりも、話がわかりやすく、よりイメージが鮮明になり、説得力が出るだろう。具体的で事実に基づいた話の細部は、話の効果が格段に高まるのだ。
さて、現代心理学の知見に照らし、スーザンはこんな風にまとめる。
「グループというのは、その場の支配的ないしはカリスマ的な人の意見に従うもの。ところが、優れた話し手であることと、アイデアが優れていることの間に相関などありません。自分独自のアイデアを考え出して、それから集まって、ほどよく調整された環境で話し合うほうがずっと良い……」
そして、3つの行動をうながしている。
1番目:絶えずグループ作業するなんてやめましょう。
子どもたちに一緒に作業する方法を教えるべきですが、独りで作業する方法も教える必要があります。それが深い思考の生まれる場所だからです。
2番目:荒野へ行きましょう。
ブッダのように 自分の啓示を見つけましょう。気を散らすものから離れ 自分の思索に耽る時間を もう少し増やしましょうということです。
3番目:自分のスーツケースの中身をよく見て、なぜそれを入れたのか考えてみましょう 。
世界はあなたと、あなたが持っているものを必要としています。
そう、これら行動にはウォズニアックもイエスもあてはまる。彼らがスーザンの話に具体的なイメージを沸かせ、より真実味をおびたものなっているのだ。カーネギーは「犬」ではなく「ブルドック」と言いなさいとしている。具体的であるほどに、話はより人を引き込むパワーを増すのである。
[脚注・参考資料]
TED「内向的な人が秘めている力」スーザン・ケイン Filmed Feb. 2012
http://www.ted.com/talks/susan_cain_the_power_of_introverts?language=ja