はっきり言って、学校側にいじめの存在を認めさせるのは困難である。いじめ対策などいくらやっても評価されないから、教師の多くはいじめの撲滅に不熱心である。仮にいじめの存在を察知しても、自殺でもされない限り隠蔽するのが斯界の常識。校長や教育委員会も組合が怖いから、隠蔽工作に協力する。
だから、いくら学校側に対処を迫ったところで、「いじめなど存在しない」と追い返されるのが関の山である。彼らが考えているのは、ひたすら保身だけなのである。
そこで、私がお勧めしているのは、学校ではなく法務局の人権擁護委員に相談することである。「学校教育法に基づく出席停止処分」の手続きを手伝ってもらい、まずはいじめの現場から子供を引きはがす。中学生の場合、学校を長期間休ませることは高校進学に不利に働くが、この手続きを取れば内申書に傷がつくことはない。
次に、加害者を特定できたら、躊躇せずに刑事告訴をして警察に動いてもらう。ここは親の勇気次第である。傷害事件は親告罪ではないが、警察は証拠がなければ立件できないから、いじめの事実を掴んだ段階で子供にICレコーダーを持たせてその音声を文字に起こしたものを証拠として残すなどしておく。体に傷や痣が残っている場合は、医師から診断書をもらっておくべきだ。
肝心なのは、こうした手続きを迷わず一挙に実行することである。学校の世界は「手のひらを返す」世界でもある。形勢が逆転すれば、とたんにこちらに有利になる。
法務局や警察に駆け込むのは、抵抗があるかもしれない。しかし、現代のいじめは、放っておけば子供が殺されてしまう。もはや、学校を聖域視してはならない。それが、大津市の痛ましい事件で得られた最大の教訓だろう。
平塚エージェンシー所長 平塚俊樹
1968年生まれ。証拠調査士。不動産、メーカーのクレーム担当を経て2004年より企業・弁護士等を対象に危機管理コンサルティング。著書に『完全いじめ撃退マニュアル』『Lawより証拠』ほか。
1968年生まれ。証拠調査士。不動産、メーカーのクレーム担当を経て2004年より企業・弁護士等を対象に危機管理コンサルティング。著書に『完全いじめ撃退マニュアル』『Lawより証拠』ほか。
(山田清機=構成 永井 浩=撮影)