内訳が非公開の管理委託費

問題は駐車場が空いた場合である。見込んでいた料金が入ってこなければ管理費会計が赤字になり、「赤字を埋めるため管理費をアップしましょう」ということになる。売れ残りが多い新築マンションでは、入居した途端に管理費のアップが必要になったというケースもある。

さらに厄介なのが、機械式駐車場を設置しているマンションである。機械なので定期的な点検や部品の交換が必要であり、さらに耐用年数は通常14~15年、長くても20年といわれている。新しい設備に入れ替えるには、1台(1パレット)当たり100万円ほどかかり、100台ならなんと1億円もの莫大な費用になる。前述のように修繕積立金は不足気味で、機械式駐車場の更新費用まで想定していないケースがほとんどだろう。

その時点で「そんな話は聞いていない」といっても通用しない。売り主は契約や引き渡しの際、いちおう管理費会計や長期修繕計画について説明しているはずだからだ。購入者は一生に一度の買い物をしたことで気持ちが高揚し、こうした隠れた問題を見過ごしているのである。

そもそも、消費税のアップに加え、アベノミクスでインフレとなり物価が上昇すれば、マンションの維持管理などにかかる費用は間違いなく増えていく。特に管理費会計が赤字になれば、収支のバランスを取るため管理会社はてっとり早く管理費の値上げを持ち出してくるだろう。そこで大切なのは、管理費の大部分を占める管理委託費を見直すことである。

管理会社は多くの場合、分譲時に売り主の不動産会社が子会社などを指名で選んでいる。市場の競争にさらされていないため、管理委託費はかなり余裕を持った設定になっている。なかには、管理委託費の内訳が非公開ということもあり、見直しの余地は大きい。第三者の目を入れ、正当な根拠を示しながら交渉すれば、管理委託費を引き下げつつ、駐車場料金に依存した不健全な管理費会計などの見直しもできるはずだ。

ソーシャルジャジメントシステム社長 廣田晃崇
1978年生まれ。管理組合向けコンサルタントの草分けとして、快適なマンションライフ実現に向けて取り組んでいる。
(構成=伊藤博之)
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