何かを仕掛ける熱狂の中にいたい

私は大学を卒業後、楽天に4年間勤めて去年の3月からこの会社で働き始めました。もともと大学時代に社長の南がビズリーチ事業を立ち上げる際にインターンとして手伝ったんです。

南との出会いは、大学時代にオリンピックの招致活動をやっていたことがきっかけでした。2016年開催の立候補のときです。学生団体を仲間で立ち上げて、最終的には100大学が参加する団体になりました。

最初は知恵もお金も人脈もない、でも学生だから時間だけはいっぱいあるという中で、スポーツ系の企業の社長さんに会いに行ったりしていたんです。当時、南は楽天イーグルスの立ち上げをしていたので、その関係で会うことになったんですね。

どうしてオリンピックの招致活動なんてしていたかというと、2002年の日韓ワールドカップのときに、中村俊輔さんや中田英寿さんが世界のフィールドで戦う姿に感動すると同時に、どうやってあんなどでかいイベントを日本に招致したんだろう、ということがすごく不思議だったからでした。大学でもスポーツにかかわることをしたいと思っていたちょうどそのとき、石原都知事が東京にオリンピックを呼ぶと言っていた。それで、その世界が覗けるチャンスかもしれないと考えたんです。

招致活動を体験してみて今もよかったと思っているのは、少し遠い未来を考えることが私たちのような若者にとっては、本当にポジティブな体験になるんだってことでした。学生時代ってわりと一週間後や来年のことばかり考えているじゃないですか。でも、オリンピックの招致活動では10年後の東京や日本のことを考え、それに賛成だったり反対だったりと議論を積み重ねるわけです。

その体験は社会人になって自分が働いていく上で、一つの価値観になったように思います。世の中には何かを仕掛ける側と仕掛けられる側がある。どんなことでも最初は会議室でアイデアが生まれて、それを世に問う側と問われる側がいる。私は何かを仕掛けるということの面白さを招致活動で体験しましたが、常にそちら側で働くためには遠い未来を見据えている必要があるんだ、ということを実感したんです。それに若い頃は「スポーツ」にこだわっていたけれど、仕事で面白いのは何かをつくり上げていく行為そのものであって、自分の好きなことにこだわる必要は特にないということも知りましたね。

楽天イーグルスをつくろうとしていた南も、まさに何かを仕掛けるという熱狂の中で働いていて、本当に楽しそうに見えました。