「完成後、初めてのお客さんです!」の喜びの声
道の駅会津柳津に到達した時点で、残り航続距離は37km。結局、22km先の会津若松の充電スポットまで十分に到達できそうではあったが、過疎地にスポットが新設されたことに敬意を表してそこで充電することにした。すると道の駅の駅長さんが姿を見せ、「完成後、初めてのお客さんです!いやあうれしいなあ~」と大喜びであった。
EVは都市の近距離用乗り物で、こうした地方部のロングドライブにはほとんど使われない。が、このような充電箇所が徐々に増えれば、EVは日常の足やフリートユースだけでなく、娯楽の道具として使うこともできるようになる。たとえば前述の奥只見ルートも、途中に1箇所スポットができれば通過可能になる。ゆっくりとした歩みではあるが、着実にそういう時代が近づいてきていることが実感された。
会津から一気に栃木県の今市、小山を経由して東京に戻ろうと考えていたのだが、梅雨の中休みで絶好の晴天。急きょ、千葉の犬吠埼で海を見てから帰ろうと思いついた。
EVでのロングドライブでしみじみと実感されたのは、急速充電の“料金定額制”。現在は普及促進期ということでEVは補助金ジャブ漬け、急速充電料金の利用料金も日産のネットワークが月額1543円、チャデモチャージが同1000円。両方のネットワークを使っても2543円で充電し放題なのだ。
ガソリン価格も高止まりしている今日、寄り道や遠出を増やせば増やすほど出費がかさむ。ちょっと燃費の悪い車に乗った時など、ドライブを終えてガソリン代を払うたびに罰金を取られているような気分になり、おのずとお出かけの足が鈍るというものだ。それに対して“料金定額制”のEVの場合、スマホのLTEよろしく、せっかくなら走らなければ損という気分になる。「こんな晴れた日にはちょっと海や山に行ってみたいもんだな」…などといった気軽な願望が、ほとんどゼロコストで叶えられてしまうのだ。
旅好き、遠出好きの筆者は長い間、「足の短いEVは車として半人前。倍くらい走れるようになってから出直して来い」と考えていた。実際にEVでロングドライブをしてみたら、燃料代による束縛から解放されることの快感は想像をはるかに上回るものだった。もちろん充電1回あたり30分というのは時間がかかりすぎであり、技術革新が待たれるところだが、過疎地の充電スポットでは周辺に野山の緑や川の流れを楽しめるような場所が至るところにあり、時間を潰すのは意外に苦にならなかった。