こだわりが欲しいスタイリングとインテリアデザイン

さて、最後にリーフの総評。1014kmを走り切った印象としては、車としての出来は普通。フロントシートは国産車のトップランナークラスには及ばないが、宿泊を伴うような長距離ドライブでも疲れがたまるような出来の悪さはない。シートバックのホールド性をもう少し高めれば、さらに良くなるだろう。

乗り心地は悪くはないが、路面の荒れの吸収力やうねりを通過するときのフラット感は大衆車の域を出ない。せっかく低重心のEVパッケージが車の姿勢安定やハンドリング面で絶大なプラス効果を発揮しているので、足まわりをフォルクスワーゲン「ゴルフ」のような滑らかなフィールに仕立てれば、俄然高級感とスポーティ感が増すことだろう。今後の改良に期待したい。

もっとも惜しいのはスタイリングとインテリアデザインだ。両方とも、ゼロエミッションのエコカーであるということを表現しようとするあまり、車のオーナーが心から嬉しくなるような色気、高質感などを全部置き去りにしたような感じで、見た目も仕立ても大衆車そのものだ。リーフが売れない理由としてしばしば航続距離の短さや車両価格の高さが取りざたされるが、もしリーフがプレミアムコンパクトのようなスタイリングとインテリアの仕立てを持っていたら、高価格はここまでネガティブに作用せず、オーナーは見目麗しく、技術的にも時代の先端を走る高級車に、喜んで高い値段を払った可能性は十分にある。そして、他人の羨望の眼差しににんまりとしたことだろう。プリウスコンプレックスのなせるワザか、情感部分まで極端にエコに振ったのは実にもったいない選択だった。

とはいえ、現時点で一般ユーザーが比較的手を出しやすい価格帯の乗用EVは、このリーフと三菱自動車『アイミーブ』しかない。他の国産メーカーはEVと距離を置いているため、選択肢は今後も限られたものになるだろう。格好や質感はともかく、リーフは今しばらくの間しか味わえないであろう、EVのフリーライド感を楽しんでみたいというアクティブなカスタマーには一にも二にもなく薦められる新世代エコカーだった。

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