「会津若松100km」に対して航続残は64km

峠の頂上で再び道路案内板に巡り合う。「会津若松100km」の表示に対し、航続残は64km。この先、下り坂や平地がずっと続くならいいが、峻険な峠がもう一発あれば、その登り坂で電力を使い果たしてしまうことは火を見るより明らかだ。ところが、只見で奥会津の蕎麦でも食べて撤退するかと立ち寄った沿線の食堂のご主人いわく。

「このあいだ、柳津の道の駅に電気自動車の充電器ができたんじゃなかったかなあ。開所式をテレビのニュースでやってたよ」

道の駅会津柳津に電話をかけてみると、確かに6月6日に急速充電器が設置されたのだという。ドライブをしていた6月14日時点でCHAdeMOのホームページに反映されていなかったのだ。試しに日産カーウィングスのオペレーターに車載電話で問い合わせをしてみたのだが、オペレーターも把握していなかった。EVの普及を真面目に考えているというのなら、CHAdeMO協議会は参加しているメーカーが急速充電器を販売した時点で即刻、情報を更新するべきだ。

それはともかく、只見では航続距離残の表示が大幅に回復していたこともあり、会津より20km以上手前で充電が可能ならば、万が一のバッテリー切れを心配することなく走り抜けられる。俄然勇気づけられ、撤退はやめて先に進むことにした。

EVインフラの整備には大金がかかる。急速充電器の価格はここ5年ほどで大幅に下がったが、1箇所で500万円ほどもかかってしまう工事費のほうはあまり下がっていない。また、電力会社の基本料金、メンテナンスなどの固定費が年間100万円近くもかかってしまう。EVの密度が低い過疎地に急速充電器を設置することは費用対効果の点でまったく非現実的である。

長いルートの中に充電スポットが1箇所できるだけで、その道をEVが通れるようになるのだ。EVにとってごく少数であっても過疎地に充電スポットができることは、道が開通するのに等しい。将来、EV充電ネットワークが補助金の枠組みから外れ、純商用としての運営を行わなければならなくなったときも、EVが長距離を通過するのに最低限必要な充電拠点の整備は、高速道路の料金プール制のように、利益の出ているところから税金を取って行うくらいのことを考えてもよさそうだった。