――では、医師になるために最も大切な能力とは何でしょうか?

【清水】うーん、コミュニケーション能力とか信頼関係を築く能力とか、でしょうか。

【丸野】医学部に入ってみて思ったのは、数学や宇宙工学と違って、人間を相手にする世界だからけっこう文系的だなということ。患者さんの状況を理解して、患者さんにしっかりと寄り添える力が必要だと思うけど、それって机上の勉強で得られる能力じゃないよね。むしろ部活動とか集団行動といった、勉強以外の分野で人間関係を築く訓練をしてきた人の方が、勉強一本槍(やり)の人より向いている気がする。

――皆さん、今も部活動はされているんですか?

【丸野】私は美術部の鉄門踏朱会に入っています。

――鉄門って何ですか?

【丸野】東大の医学部生だけで構成されている部活動です。

【清水】僕は鉄門ボート部です。

――おお、意外。やはり鉄門?

【加藤】はい。あの、医師になるために大切な能力の話ですけど……。丸野さんや清水くんが言ったこともそうだと思うんですが、それに、体力も必要だと思います。また、現代の医学はどんどん進歩するので、情報を常にアップデートしていく好奇心や探求心、使命感や情熱といったものも、医師として高いレベルに到達するためには必要だと思います。今僕たちがやっている学生の実習の段階でも、臨床の現場で感じることはとても多くて、たとえばALS(筋萎縮性側索硬化症)のように体がどんどん動かなくなってしまう、治療法のない難病の患者さんと接したりすると、この患者さんのために何かできないのかと考えてしまう。お金や社会的地位のためではなく、少しでも患者さんのためになろうとすることが医師の重大使命だと思います。