日本衰退の一因は「人材の無駄遣い」

私がいた2004年当時は、「日本というマーケットは伸びない。あとはシュリンクするだけだから、適当にやってくれ」といった雰囲気が確かにありました。新しいことはするな、新規投資もするな。アメリカ人たちは「アジアはチャイナやインドに投資するから、ジャパンは粛々とやれ」と言っていて、悔しかったですね。日本支社が沈んでいくのを目の当たりにしながら、何もできていない自分にすごく悶々としていました。

それで周りを見れば、優秀な人材がたくさんいるんですよ。日本で優秀な人材がいるのは、こういうすでにでき上がった大企業なんですね。

彼らはみな向上心のある努力のできる人たちなのに、一生懸命に仕事をしている割に世の中に対してポジティブなインパクトを生みだせていないように感じていました。アメリカ人たちは「日本市場はシュリンクする」と言っているけれど、その原因はこうした人材が大企業に集中して無駄遣いされているからなんじゃないか、と強く思うようになったんです。

一度だけ私は出向で規模の小さな関連会社で働いたのですが、小さい会社というのは「優秀な仕組み」がないが故に、突出した個人や優秀な人材が喉から手が出るほど必要とされているんです。でも、会社が小さかったり無名だったりという理由だけで採用に苦労している。一方で大きい会社は有名だから人は集まるんだけど、実はすでに仕組みがあるから、そこまで優れた人は多くは必要とされていない。

当時の自分も含めて、要するに努力する場所を間違えているから、閉塞感を抱くんですよね。仕事をする上で努力は大切だけれど、それは私で言えばIBMではなく、もっと自分の能力を使える場所、小さくてもいいからダイレクトにマイナスをプラスに転じられるような場所ですべきなんだ、って。このミスマッチに日本のいまの閉塞感の理由があるのではないか、という仮説が「スローガン」の事業の始まりです。

もしもいま大企業で「普通の人」として働いている優秀な人たちが、自分の能力と時間を使う場所を変えれば、世の中はもっといい方向に回転するはずです。

これが日本でも定着するかはまだわかりませんが、海外では「Facebookの26番目」とか「Twitterの30番目」といった社員番号の若さが、後のキャリアにとってのステータスとして語られてもいます。それだけ濃い経験と人脈を持っているだろう、とみなされるからです。

歴史に残るようなベンチャーの黎明期のメンバーであったことが、その人にとっての大きな価値として認められる社会ができれば、ベンチャーへの志向性は増してくるはずです。いま私たちがやっている事業を、その流れをつくり出す拠点の一つにしていきたいんです。

スローガン:主力事業は企業向け採用支援サービス。東大、早慶などの上位校の優秀層をベンチャー企業に紹介している。設立2005年。社員数36人。
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