P&Gのポスターを使ったアプローチ
P&Gのイノベーション評価会議は、事業部全体での評価、ブランド・製品ラインでの評価、特定のイノベーション・プロジェクトについての評価といったようにいくつかの段階で行われる。出席者は主要メンバーを中心に、生産的で率直な会話ができる程度の範囲で決められる。
会議に誰が出席するかは、評価の範囲によっても異なる。P&Gの事業部のイノベーション評価の出席者は、CEO、最高技術責任者、最高財務責任者、最高サプライチェーン責任者で、その事業部の主要リーダーとイノベーション・チームの多機能メンバーが出席する。
チームの課題を1枚にまとめる
同社は評価方法の一つとしてポスターを使う。それぞれのチームが、イノベーションのアイデアと技術、該当する消費者調査データ、事業としての可能性、タイミングとおおまかなスケジュール、チームが直面している課題を1枚のポスターにシンプルにまとめるのだ。
なぜポスターなのか。会議の出席者には科学者が多いのだが、ポスターを使うことで、科学者は経営幹部が理解できる言葉で話さざるをえなくなるからだ。経営幹部が理解できれば、事業部も理解でき、最終的には消費者も理解できる。ポスターは焦点を絞ったり、単純化したりする助けにもなる。イノベーションから余分なものをそぎ落として、いくつかのアイデアに簡素化するのだ。
ポスターは会議室に置かれたスタンドに1枚ずつ貼り出され、出席者全員がその周りに集まってあれこれ話し合う。メンバーがデータを説明し、自分たちの考えを述べ、出席者が製品や主な技術要素に直接触れたり、動かしてみたりといった実地検証も伴うことが多い。
その後、リーダーがチームとの対話を開始し、出席者はその内容も踏まえて、それぞれのプランが十分か否かを評価し、どの分野で最大の価値を加えられるかを見きわめる。加えて、経営幹部チームは、会議室を歩き回ってすべてのポスターを眺めるだけで、具体的な一つ一つのプロジェクトを超えた関連性を見出せる。技術Aのなかに事業Bに応用できる可能性を見つけたり、特定の地域で成功しているプロセスで、本当はグローバルに実行すべきものを見つけたりすることができるのだ。