自分自身の経験を振り返ろう

次に仕事に対する不安ですが、そもそも新入社員は「わかっていないことがわからない」存在です。一方、トレーナー側は「新人がわからないことがわからない」。いくらトレーナーが新人に「わからないことは聞いてね」と言っても、新人は「わからないことすらわからない」わけで、どこかで解きほぐしてあげる必要があります。

そのためには、トレーナー側がまず、自分自身が新人時代にわからなかったことを思い出す必要があります。自分にとっては当たり前のこととなっている「上司への報連相」さえ、新人時代はその意味がわからなかったはずです。そういったことを思い出しつつ、「この仕事にはこんな意味があるんだよ」と、自分自身の経験を言葉にして語ることが、新人の不安を取り除くことにつながるのです。

OJTトレーナー向けの研修では、しばしばキャリアを振り返るワークが取り入れられています。これはOJTの中で、自らの成長を振り返り、経験を語る必要があるからです。その意味では、新入社員のOJTトレーナーとなることは、自分自身のキャリア、経験を振り返る機会にもなり、自らの成長にもつながります。

最後に社内の人間関係に対する不安ですが、これについては、OJTトレーナーが一人で解決しようとしないことが大切です。トレーナーも自分の仕事をしなければなりません。一人ですべてを教えようとすると、時間が足りなくなってしまいます。

そこで重要なのが、新人の育つネットワーク環境を整えてあげることです。たとえば、同じ部署はもちろん、他部署、取引先など様々な人を紹介し、いろんな接点をつくってあげる。そのことで新人の人間関係に対する不安は軽減していくはずです。

新人時代にお世話になった先輩、上司のことは一生忘れないものです。OJTトレーナーはよくも悪くもその新人の仕事人生を左右する存在。いい意味で記憶に残る存在になりたいものです。

(構成=井上佐保子 写真=PIXTA)
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