暗黙知【9】――共通言語を探しているか?

なぜだか話が通じない――。こう感じることがあるとすれば、それは相手との共通言語が欠落しているからかもしれません。ここで言う共通言語とは、日本語か英語かといった言語の種類の話ではなく、お互いの意識を共有したり、理解できる枠組みのようなものを指します。

たとえば、同じ趣味や体験を共有していれば、少ない言葉でも理解し合えることがあります。一方で、バックグラウンドや境遇がかけ離れた相手には、いくら言葉を尽くしても十分に伝わらないかもしれません。

このとき共通言語を探せるかどうかは、伝えたいことを的確に相手に伝えるうえで大切です。

先ほど、小久保選手は野球を数字で語ることができるというエピソードを紹介しました。じつは彼は経営者からの評判がいいのです。なぜなら、経営者も数字を使って話すのを好むからです。あるいは小久保選手のことですから、経営者と話すときは、数字という共通言語を意識的に駆使しているのかもしれません。逆に、数字というフィルターを通して世の中や物事を捉えられない人は、経営者からは信用されません。

●考え抜いた末の思想も、共通言語となりえる

よく、「芸術に言葉はいらない」と言います。英語が話せなくても芸術家が外国語圏で成功できるのは、彼らにとって芸術が共通言語だからです。言葉がなくても、わかる人には“わかる”。共通言語になるのは、なにも芸術だけではありません。体感として体に染み込んでいるもの、あるいは考え抜いた末にたどり着いた思想。これらがお互いに共鳴したとき、共通言語となりえます。

経験や知見の引き出しが多い人は、こうした共通言語をたくさん持っています。相手と共通する言語を探すことができれば、それを突破口にして異業種や異文化の人とも話をすることができる。そのようにして「稼ぐ人」は自分の味方やファンを増やし、ますます「稼ぐ人」になっていくのです。