【田原】中国の電動バイクは、いくらぐらいですか。

【徳重】中国製は自転車にエンジンをつけたタイプが多くて、だいたい4万~5万円。いわゆる電動バイクは7万円前後です。僕たちは、できたら8万~9万円でやりたい。

【田原】品質を高めていって、その値段ですむのかな。中国製と1万円ぐらいしか変わらないよね。

【徳重】もちろん削れるところは削らないと、安い価格は実現できません。デザインも、そのひとつ。デザインをシンプルにすると、金型の点数が少なくなってコストが抑えられます。あとはホーンやメーターですね。ベトナムだと、ホーンの音が鳴らなくても気にする人はほとんどいませんから、それなりでいい。逆に中国製と差別化するために、ブレーキやモーター、コントローラーはしっかりやっています。

【田原】ベトナム以外はどうですか。

【徳重】この春からフィリピンで三輪をやります。フィリピンには、国民の足になっている「トライシクル」という三輪タクシーがあります。それを政府の支援で電動にリプレイスしていくプロジェクトがあって、現在は入札の途中です。世界で28社が手をあげて、最終的に選ばれるのは3社。いま4社まで絞りこまれたところで、もうすぐ結果が出ます。おそらくうちは選ばれると思います。そういう想定で、すでに量産の準備も進めています。

【田原】決まると、どうなるの?

【徳重】今回の入札は、まず3社で3000台。最終的には16年までに10万台を電動化することになります。僕たちにとっては、非常に大きなプロジェクトです。

【田原】何台で採算が取れるのですか。

【徳重】1万台で十分じゃないですか。

【田原】フィリピンで量産するとなると、工場の設備投資や人員も必要になりますよね。1万台で回収できる?

【徳重】電動はガソリンと違ってお金がかかりません。ガソリンバイクの場合、工場の6割はエンジンまわり。僕らはそれがなくて、全体の部品点数も4分の1ですみます。組み付けの工員も、1万台なら40人でできる。ガソリンだと5倍の人数が必要でしょう。