気になる診断書についてですが、これまで私が見たなかで「ひどいな」と思ったのは、うつ病と診断して抗うつ薬の投与も始めているのに、休職期間が2週間という内容のものでした。2週間というと、抗うつ薬の効果がやっと出始める頃。ですから2週間という休職は本来ありえないはずで、その診断や治療内容に対して、大きな疑問を抱かざるをえませんでした。

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うつ病で社員が休職したら想像以上にかかる会社の負担

すでに精神科の医療現場の問題点を察した企業関係者の方もいらっしゃるのか、「違う医療機関でもう一度診察を受けて、診断書をもらい直してほしい」と休職を申し出た社員に求める会社も徐々に増えています。実はこの2週間の休職の診断書も、そうした会社からの照会で目にしたものだったのです。

もっとも会社サイドからしたら、そうした行動に出るのも無理はないように思います。社員が休職することによって生じる目に見えない会社側の負担は想像以上に大きいからです。図のデータを見て、「えっ」と驚く読者の方もいらっしゃることでしょう。

これは年収600万円の社員が、発症3カ月間を経て6カ月の休職に入り、その後に試し期間3カ月を終えてから本格的に職場復帰した場合の会社側負担の試算です。休職期間中の傷病手当は健康保険から支給されて本人の給与分が減るものの、その他のコストがかさんで481万5000円の負担になります。売上高営業利益率が5%なら、この負担をカバーするのには1億円近い売上高が必要になる計算です。