認定されやすい流れになっているが……

労災認定がおりないと、会社や上司にもこんなリスクが……

労災認定がおりないと、会社や上司にもこんなリスクが……

労働災害(労災)の実情がここ十数年で急速に変わってきた。かつては労災というと、鉱工業の現場における死傷事故が認定の中心だったが、最近はホワイトカラーが業務に起因してうつ病などの精神疾患を発症したり、それが原因で自殺に至ったりしたケースも労災として認定されるようになった。

そもそも労災とは、仕事中や通勤途中に怪我をしたとか病気になった、死亡したという場合の災害である。労災による負傷者や死者(遺族)などに補償を行うのが、労働者災害補償保険(労災保険)。労災保険は会社(雇用者)側が保険料を100%負担し、労災発生時には会社からの申請を受けて労働基準監督署長が労災であるかどうかを認定する、という仕組みである。

労災認定には客観的な基準がいくつかあるが、個別のケースにより事情が異なるので最終的な判断は現場の裁量に任される。そのため、当事者が労災だと思っても認定されないケースも少なくない。たとえば死傷事故が労災の中心だった時代には、仕事上のストレスが原因でうつ病になり自殺したとしても、「業務に起因する」とは判断せず認定を見送ることが一般的だった。

だが、業務に起因すると思われる精神疾患やそれによる自殺は確実に増え続け、労災申請も増加の一途をたどっている。これを受け、全国の労基署を束ねる厚生労働省の見解も変わってきた。1999年には、うつ病など精神疾患のケースでの労災認定の「判断指針」を示し、「職場における心理的負荷評価表」「職場以外の心理的負荷評価表」を作成して、さまざまなエピソードとそれによるストレス強度を示した。また労基署長が労災保険の不支給処分を出した場合に、これを不服として労災認定を求めた行政訴訟でも、うつ病やそれによる自殺のケースで労災認定する判決が出されるようになった。