とはいえ、サラリーマンがうつ病などの精神疾患を発症したからといって、すべてのケースで労災に認定されるわけではない。離婚や病気といった個人的な要因も考えられるからだ。認定の条件は次のようなものだ。(1)精神疾患を発症していること、(2)発症から約半年以内に業務に起因する強い心理的負荷があったこと、(3)職場以外の心理的負荷による発症ではないこと。
実際には、たとえば原因が長時間労働であれば、それを証明するタイムカードや健康診断の結果などケースごとのさまざまな裏付け資料をもとに労基署長が判断する。(2)と(3)は、前述の「評価表」を基準として総合判断される。
この「評価表」は、2009年4月に一部改正された。目を引くのは「ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」などの項目が追加されたことだ。職場でのハラスメントが認定要因になったといってよい。具体的には、人格を否定するような発言や、怒鳴ったり机を叩いたりして仕事を強要するといった通常の業務命令の範囲を超えた行為があり、それが続いたりすれば、この項目に該当すると考えられる。
それでも労災認定がおりなかったときは、不支給処分の取り消しを求めて行政訴訟を提起することができる。また、その際、精神疾患の原因が上司など周囲によるハラスメントであることを理由に、あわせて会社や上司個人への損害賠償を求める民事訴訟を起こすこともできる。会社にとっては大きなリスクである。職場のメンタルヘルスを真剣に考えなければならない時代がやってきたのだ。
※すべて雑誌掲載当時
(構成=面澤淳市)