試合前はいつも「完全試合をしましょう」
目指すものは毎週、勝つこと。毎週、完全試合をするのが、僕の究極の理想です
「週刊ベースボール」2021. 6. 28(ベースボール・マガジン社)
先発投手の完投がそれほど珍しくなかった頃は、「最初は完全試合を目指す。ランナーを許したらノーヒットノーラン。ヒットを打たれたら完封を目指して」と威勢のいいことを言う投手がいましたが、先発投手は6~7イニングを投げれば合格という投手分業が当たり前になった今日、完全試合やノーヒットノーランは余程のことがなければ達成できないものになっています。
そんな時代にありながら山本由伸は日本でノーヒットノーランを2022年と2023年の2度達成し、メジャーリーグでも2025年にノーヒットノーランまであと1アウトという快投を見せています。この時には10奪三振、2与四球、許した安打は1本のみだっただけに、「すごく悔しいです」と口にしています。
しかもその後を任されたリリーフ投手が打たれてチームは逆転負けしただけに悔しさはひとしおだったと思います。
日本での2度のノーヒットノーランも、1968年、71年の近鉄・鈴木啓示以来52年ぶり10人目であり、2年連続の達成となると、巨人の伝説の投手・沢村栄治の36、37年、黒鷲軍の亀田忠の40、41年に次ぐ3人目というまさに快挙というほかありませんでした。
2度目のノーヒットノーランは前年、今はチームメイトの佐々木朗希(当時、千葉ロッテマリーンズ)に完全試合を達成された因縁の相手、場所だっただけに、「ファンの方が一番悔しかったかもしれない。達成できて良かった」とスタンドに頭を下げた後、こう言っています。
「今年は完封もできていなくて、少しでも長く行けたらいいなと思っていたので。最高の結果になって良かったです」
こう謙虚に話す山本ですが、この当時も捕手の若月健矢によると、いつも試合前には「完全試合をしましょう」と言っていたというから驚きです。実際、山本は早くからこんな目標を口にしていました。
「目指すものは毎週、勝つこと。毎週、完全試合をするのが、僕の究極の理想です」
こう聞けば、ほとんどの投手は「いくらなんでもそれは」となりそうですが、山本は捕手に言うほどですから、恐らく本気でそう考えているし、その理想を追い求めているのでしょう。どうせなら高すぎるほどの目標を自らに課す。そこを目指すからこそ理想のピッチングに近づくことができるのです。

