2026年シーズンにMLBに在籍した日本人選手は計15人。経済・経営ジャーナリストの桑原晃弥さんは「その中で、創業時の本田宗一郎や孫正義と同じように、世界の頂点を目指し、その夢を現実のものとしている人物がいる」という――。

※桑原晃弥『自分のオリジナルを追求し勝ち続ける 山本由伸の名言』(ぱる出版)の一部を再編集したものです。

ドジャー・スタジアム
ドジャー・スタジアム〔写真=Jake N.(Mrmiscellanious)/CC-BY-2.5/Wikimedia Commons〕

「メジャーで投げたい」と思ったきっかけは「前田健太」

あの試合を見て、僕はいつかメジャーリーグで投げたいと強く感じるようになりました

『SHO-TIME 3.0 大谷翔平 新天地でつかんだワールドシリーズ初制覇』(ビル・ブランケット著、タカ大丸訳、徳間書店)

山本由伸は今や誰もが認めるメジャーリーグを代表する投手ですが、中学生の頃は将来のメジャーリーガーを想像させるような選手ではなかったといいます。

所属していた東岡山ボーイズの監督だった中田規彰は入団当時の山本を振り返り、「ヨシがプロになるなんて、誰も思わなかったはずですよ」と話しているほどです。

当時のチームメイトもスーパースターになった山本を見て、「本当に山本由伸って、“あの山本さん”なのかな?」と思うことがあったというほどですから、たしかにその頃の山本は野球が大好きな少年ではあっても、プロ野球選手になるとか、ましてやメジャーリーガーになるといった片鱗を感じさせることはなかったのでしょう。

一方で山本は高校時代にプロへの道を開き、オリックス・バファローズ時代には早くからメジャーリーガーへの夢を抱き始めていました。山本がメジャーリーガーになりたいと真剣に考えるようになったのは2019年、ナショナル・リーグディビジョンシリーズで前田健太(当時ロサンゼルス・ドジャース)の投げる姿を見てからだといいます。

この年、プロ3年目の山本は先発投手となり、防御率1.95で最優秀防御率を獲得、背番号も43から18に変わり、エースとしての活躍が期待される選手へと成長していました。

そんな山本にとって、日本で2度の沢村賞を受賞、メジャーリーガーとなった前田は憧れの存在だったのでしょう、超満員のドジャー・スタジアムで救援投手として投げる前田を見た感想を山本はこう語っています。

「いつか自分もメジャーで投げたいという思いを高めた原動力だった」

ようやくチームの先発として投げるようになった選手でありながら、早くもメジャーリーグを視野に入れていたというのは驚くばかりですが、山本のそこからの成長は驚異的なものでした。

それから4年、山本は2021年から3年連続で沢村賞とパ・リーグMVPを受賞、名実ともに日本一の投手となり、2023年オフにドジャースと12年総額3億2500万ドルという、メジャーリーグの投手としては史上最高額で契約することになります。

そして翌年にはワールドシリーズに登板、2025年にはワールドシリーズ3勝を上げMVPまで獲得します。「いつかメジャーリーグで投げたい」と強く感じてわずか6年後のことでした。強い思い、それは人をこれほどまでに成長させることになるのです。

★強い思いは人を成長させる原動力となる。