求められるスター性
しかしながら、監督就任には、巨人ならではの複雑な事情があった。今季、開幕時点での監督は阿部慎之助だった。阿部は現役時代にMVPも受賞し、2000安打も記録するなど十分な実績を残し、2023年オフに監督就任。翌2024年に4年ぶりのリーグ制覇を飾った。しかし、3年目のシーズン途中である2026年5月25日、自宅での長女への暴行容疑で現行犯逮捕され、翌26日に監督を辞任する。
巨人は急遽、橋上秀樹オフェンスチーフコーチを監督代行に据えた。橋上は阿部と同じ安田学園高出身。ヤクルトに入団後、日本ハム、阪神でプレーしたが、通算安打数は215本に過ぎず、阿部のようなスター選手ではなかった。NPBでコーチ歴は長いが、監督経験はなかったため、その采配は未知数だった。
しかし橋上は、圧倒的戦力の阪神に伍して、チームをうまくまとめ上げ、シーズン最終盤まで首位争いを繰り広げたのだ。今年の巨人は、岡本和真がMLB(メジャーリーグ)のトロント・ブルージェイズに移籍し、絶対的な中軸が不在。坂本勇人や丸佳浩らベテランに衰えが見えるなど、明らかな過渡期にあった。
固辞し続けた男の心変わり
それでも、現有戦力をうまくまとめ、使える選手を適材適所に使って、阪神を追い上げた。一部メディアやファンからは橋上の手腕を高く評価する声が上がった。
ただ、巨人は、橋上を後任監督にする意志は全くなかった。しかし、健闘した橋上を退任させて、その後釜に原辰徳、高橋由伸ら監督経験者を据えるのは「手あかがついた人事」という印象を持たれる。かといって、一部に挙がった「坂本勇人兼任監督」は、あまりにも時期尚早だ。
そうした中で、松井秀喜が最有力候補に挙がったのではないか。MLBに移籍したが、日本では巨人一筋であり、実績でも文句のつけようがない。橋上への同情論も吹っ飛ぶインパクトある人事ではある。ただ松井はこれまで、巨人監督就任を頑なに拒んできた。MLBでは名門ニューヨーク・ヤンキースの一員として日本選手初のワールドシリーズMVPに選出されるなど、スター選手として活躍した成功者であり、労多くして功少ないNPB球団の監督を引き受けるメリットは少ない。松井同様、MLBで成功した日本出身選手の多くは、アメリカに生活拠点を持ち、悠々自適の生活をしている。
