大型補強でも勝てない罠

当然ながら巨人、読売グループは総力を挙げて松井を支援するだろうし、大型補強もするだろう。ただ、巨人は往々にして大型補強をしたのに結果が伴わないことがよくある。2021年シーズンは、DeNAから梶谷隆幸と井納翔一をFAでダブル獲りしたにもかかわらず3位に終わっている。このあたりは大きな不安材料だろう。

さらに言えば、松井はNPBに関しては「浦島太郎」状態である。2002年オフに「自分は裏切り者」という言葉を残してヤンキースに移籍後は、エンゼルス、アスレチックス、レイズとMLB球団を渡り歩いた。

この時期あたりからMLBは、野球の統計学である「セイバーメトリクス」が急速に普及。トレーニング、選手育成から技術指導、作戦などが劇的に変化した。

松井はアメリカでプレーしながら、これらの変化をつぶさに見てきたはずだ。しかし、日本のプロ野球もこの間に大きく変貌した。

松井がMLBに移籍して2年目の2004年、NPBでは「球界再編」が起こり、日本プロ野球選手会の古田敦也会長の指揮の下、史上初のストライキが行われた。

ストライキから始まった大改革

これによって1リーグ10球団への縮小は回避されたが、翌2005年から交流戦が行われ、育成ドラフトが導入されるなど、選手獲得の制度も変貌した。投手起用も先発完投重視から先発・救援の分業へと大きく舵を切っている。

最近では、MLBの影響を色濃く受け、トラックマン、ラプソードなどの先進機器を駆使したバイオメカニクス的なデータを活用している球団がほとんどだ。ただ、こうした最先端のデータだけでなく、従来の勘と経験に頼る指導も併存している。アナリストが実権を握るのではなく、コーチなどの意見も尊重される。巨人はデータ野球では先駆的な球団ではあるが、こうした日本独特の指導体制にも、少なからず戸惑うのではないか。

ここ20年は、プロ野球史上でも最も目まぐるしく変化した時期だといえる。変貌した今の日本プロ野球に、アメリカ帰りの松井は、しっかりと対応できるのだろうか。「お客さん」としてアドバイスするのとは異質の仕事を十二分にこなせるかどうか、気がかりなところだ。そしてマスコミへの対応だ。MLBで一定の成功を収めた日本出身選手が、アメリカを離れたがらないのは、セレブになればプライバシーが完璧に守られる生活環境の快適さがあるという。