三田会の結束が「諸刃の剣」に

しかも現在は、慶應の就職力だけを特別視する理由が薄れている。早稲田からでも金融、商社、コンサル、IT、マスコミなどの人気企業を十分目指せる。両校とも就職市場で最上位の私立大学として扱われる以上、わずかな就職差よりも、入試への納得感、学びたい内容、キャンパス環境、学生の多様性が重視されるのは当然だ。

要するに、慶應の就職力が落ちたというより、就職力しか語られない慶應が古く見え始めたとも言えるだろう。

「三田会」に代表される人的ネットワークは、以前から慶應の強みとして語られてきた。幼稚舎から大学、卒業後の三田会まで続く結束は、内部に入れば心強い。

しかし、外から見ると「身内で固まる大学」という印象にもつながる。一般入試で入る学生が、「内部進学者の完成された人間関係になじめるのか」「途中参加の外様になるのではないか」と感じても不思議ではない。

かつては、その閉鎖性こそがブランドだった。誰でも簡単には入れない共同体だからこそ価値があると考えられていた。だが、多様性や開放性が評価される時代に、過剰な身内意識は選民意識や排他性と紙一重だ。慶應が誇ってきた結束力が、令和の受験生には息苦しさとして映り始めたのだとすれば、何とも皮肉である。

慶應義塾大学
写真=iStock.com/mizoula
※写真はイメージです

4年間を都心で過ごせる強み

一方、早稲田は良くも悪くも雑多だ。東大早慶は全体として関東圏出身者が多くの割合を占める大学となっている現実はあるが、それでも一般入試組、推薦組、附属・系属校出身者、地方出身者、留学生などが混在し、筆者が在学していた中でも「付属とそれ以外」の差は感じなかった。

志願者に占める女子比率も早稲田37.5%、慶應28.1%とイメージとは裏腹に早稲田が上回る結果となっており、学生構成の違いも表れている。

早稲田を選んだ理由として挙がっていたものの1つに、「4年間同じキャンパスで過ごすことができ、立地が良い」というものもある。

慶應の主要文系学部では、1、2年次を神奈川県横浜市の日吉キャンパス、3、4年次を東京都港区の三田キャンパスで過ごすケースが多い。日吉は交通利便性が高く、広いキャンパスも魅力だが、所在地はあくまで横浜市である。

学生が在学中から都心企業のインターンや学生団体、スタートアップなどに参加する時代には、新宿区の早稲田・戸山周辺で4年間を過ごせたほうが良いと考えるのは自然だろう。生活圏や人間関係を途中で変えずに済み、都心での活動とも両立しやすい。