大阪の「ざっくばらん」が信頼や安心に

【太田】電話を取っても、すごく早口で何を言っているのかわからない。明石の場合は大阪弁に加えて、播州弁も入っていたのかもしれません。

【大﨑】関西の人はだいたい早口。すぐに慣れたでしょ。

【太田】はい。関西の方ってみんな話が上手。いつも誰かを笑わせようとしている。すごい技だなと羨ましかったです。真面目な顔をして話しているので「そうなんですか」と頷いていると、「そんなん冗談に決まっているやん」と言われたり。最後に「知らんけど」ってつけられたり(笑い)。

【大﨑】ぼくは(大阪府)堺市で生まれ育って、吉本興業というところに入って、東京と大阪をうろうろしてきました。大阪の方がざっくばらんで楽。ざっくばらん、が信頼や安心につながっている気もします。

【太田】私だけだったのかもしれませんが、関東の人って自分を良く見せたいっていうのが強いかもしれない。関西の人は飾らず、自分の失敗さえネタにする(笑い)。

【大﨑】結婚後、子育てでフルタイム勤務から離れた時期もあったそうですね。

【太田】夜勤に入れないので非常勤の時代がありました。主人の両親と同居するようになって、すぐに夜勤やります、病棟(勤務)やらせてくださいって(笑い)。私の両親も働いていて鍵っ子でした。

できれば自分の子供はそうしたくないなって思っていたんですが、結局同じ感じになってしまった。それに悩んだ時期もあったんですが、当時の師長さんから、親が一生懸命働いている姿を見せるのが一番の教育と言われたこともありました。

吉本興業前会長で実業家の大﨑洋さん(写真中央左)と千船病院 看護部長の太田圭子さん(写真中央右)
撮影=奥田真也
吉本興業前会長で実業家の大﨑洋さん(写真中央左)と千船病院 看護部長の太田圭子さん(写真中央右)

時間があれば手洗い、口腔ケア、陰部洗浄

【大﨑】病棟勤務のやりがいってなんですか?

【太田】やはり患者さんに深く関われることですかね。昔は在院日数が長くて、60日間入院という患者さんもいらっしゃった。そうした長期入院の中で私は何ができるんだろうって考えるのが好きでした。

【大﨑】ぼくも母親や、亡くなった奥さんが長期入院していました。そういうとき、実感するのは男って気が利かないこと。日々のケアをしたいとも思うんですけれど、何にも役に立たない。看護師さんに頼り切り。

【太田】若い頃、患者さんのにおいの原因が手、口、陰部であると学びました。それから時間があれば手洗い、口腔ケア、陰部洗浄をするようにしていました。

【大﨑】清潔でいることは尊厳と関わってきます。でも、それを率先してできるかというと……。ほんまに頭が下がります。

【太田】患者さんは気持ちが良かったら笑顔になります。自然治癒力につながる副腎皮質ホルモンが出るとも教わりました。実際にそうだと感じています。ご家族も喜んでくださる。

【大﨑】めっちゃ金持ちの人は違うかもしれないですけれど、ぼくらは1日仕事をして帰り道に綺麗な夕焼けが見えたら、あーこの時期の夕焼けやっぱりええなとか、潮風のにおいがするなぁなんて感じることもある。風呂入った瞬間、今日はようやったな、晩ご飯なんやろ、とかそういう積み重ねが楽しみになる。

入院している人は夕焼けも見えないし、なかなかお風呂も入れない。身体を拭いてもらえるときは、唯一、ほっとする、快感の時間かもしれない。そういうことに気を遣ってくださる看護師さん、やっぱりええな(笑い)。身体の拭き方もぼくらと違うんでしょ?

【太田】(身体の)末梢から中枢に向かって手を動かす、できるだけ冷めないように熱いタオルを使うとかですかね。ただ、今は衛生面、コストの関係で布のタオルから紙のタオルになっています。薄いからすぐに冷めてしまうんですよね。働き方改革もあってそこまで手をかけられないという現実もあります。それが今の課題です。