『22世紀の民主主義』が与えた衝撃
優秀な経済学者であり、今やタレントとしても活躍するイェール大学の成田悠輔の著書、『22世紀の民主主義』(SBクリエイティブ)は、2022年に出版され、年間ベストセラーに選出されるほどの話題を呼んだ一冊である(※5)。
成田の立論はそれほど複雑なものではない。提示される「22世紀の民主主義」とはその実、選挙を排したアルゴリズム民主主義に他ならない。成田によれば民主主義とは詰まるところ、民意を重視して、それを反映した政策を作り実施するための政治制度である。しかし、その民意を反映する手続きとしての選挙が、今や機能不全に陥っている。投票率は低下し、若年層の減少によって生じる非均衡はもはや隠しがたいものとなっている。こうした事態を受けて成田は、選挙制度に対してもはや時代遅れであるとの診断を下す。
代わりに提示されるのが、アルゴリズムを用いた「無意識民主主義」である。この構想において民意は、私たちが暮らしの中で残していくデータに基づいて把握される。だが元来、民主主義においては、お互いが自分の利益を抱えつつ、公共的に物事を考えて話し合うことが望ましいとされてきたはずだ。
※5 成田(2022)
現在の民主主義は理想からはほど遠い
しかし、現在の民主主義は、このような理想に到達しているとはおよそ言い難い。国政選挙の投票率はおよそ半分にとどまっている。
地方選挙に至っては、政治家の成り手すら不足している有様で、多くの人が既存の政治に満足していないのは明らかである。民主主義の根幹をなしている選挙が機能不全に陥り、ネット上では党派性に基づいた罵りあいが溢れ、熟議からはかけ離れた現実が広がっている。
機能不全に陥る民主主義、真実を蔑ろにして、自分たちにとって都合のいい物語を構築する政治家ならびに、その支持者によって運用される政治に、見切りをつける人が出てくるのは、それほど不思議ではない。
「それって、あなたの感想ですよね?」という、いかにも思いやりを欠いたフレーズが、良くも悪くも人口に膾炙したのは、このような背景があったからだと解せる。
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