通勤にまつわる経済的ロス、精神的ロス

私は就職後12回転職をし、12回引っ越しをしています。

楽天証券経済研究所客員研究員 
山崎 元氏

住居は自分の職場や家族構成の変遷とともに変えられると好都合です。特に郊外に自宅を構える場合は注意が必要です。通勤時間に伴う精神的、経済的ロスが馬鹿にならないからです。ぜひみなさんにも計算していただきたいのですが、自分の年収を1年の実働時間で割ると「時給」を計算することができます。年収1000万円の人ならば、1日8時間×250日(1年の稼働日数)=2000時間働くことで、およそ時給は5000円になります。

つまりその人の1時間は5000円の価値になるわけで、そこで仮に通勤時間が片道1時間かかると、1日に1万円のロス、1カ月で約20万円も損することになります。満員電車の疲れは労働の質も下げます。自分の時間には常にコストがかかることをまずは意識すべきでしょう。

持ち家か賃貸かで悩む人は多いですが、最終的には価格の問題になってきます。投資の利回りとして十分安く買えるなら購入すればいいし、価格が高いなら賃貸にしたほうがいい。無理に高額なローンを組んでも、将来それが資産として価値を保つかは疑問です。少子化で中古住宅は余るのですから、「持ち家なら将来自分のものになる」という不動産屋の言葉を鵜呑みにせず、家族構成や生活スタイル、職場の場所により冷静に考える必要があります。

年齢に応じて郊外の持ち家を売り、市街地の賃貸マンションに移ることも選択肢の一つです。利便性が向上すれば、自分の生活だけでなく、友人や親戚も訪ねてきやすくなります。子どものために広い家を購入しても、将来的には夫婦2人の生活になります。2人暮らしにそれほど広い空間が必要なわけでもなく、持ち家だとリフォームなどの出費もかかる。子どもが巣立つタイミングで上手に家を売り適切なサイズの賃貸に切り替えれば、無駄な出費はかなり省けるのではないでしょうか。