国家間のパワー分布が戦争の原因となり得る

次に第2イメージは「国家」である。これについては、中国において実際の政策決定を行う共産党が台湾統一を目標として掲げていることがポイントとなる。

高橋杉雄『世界戦争論 次の大戦争をどう防ぐか』(SB新書)
高橋杉雄『世界戦争論 次の大戦争をどう防ぐか』(SB新書)

ここで目標としているのはあくまで統一であり、必ず武力を行使して統一するという意味ではないが、武力を行使するオプションが排除されていないことには留意する必要がある。そのため、第2イメージに基づくならば、共産党の方針こそが戦争の原因となり得ると論じられることになる。

最後の第3イメージは「国際システム」である。これは国家間の関係を統御する超国家主体がないアナーキーな国際関係においては、国家間のパワーの分布が戦争の原因となり得るという考え方である。

この文脈で台湾海峡有事を考える場合に重要になるのは、米国とのパワーバランスである。米国はいまや唯一の超大国といえるほどの国力の優越性は持っていないが、それでも世界の中で最大の大国であることは間違いない。中国はGDPで世界2位だが、2位ということは1位がいるということであり、アメリカこそがその1位で、そのGDPは中国の約1.6倍の大きさである。

米国最新版「国家防衛戦略」の危機感

台湾海峡有事が実際に起こった場合、米国が台湾を防衛するために介入する可能性があるが、そうなればGDP1位の国と2位の国の間の大戦争と言うことになる。これは言うなればかつてイギリスとドイツが戦ったような世界の覇権をかけた戦争といえる。

実際、米国が2026年1月に公表した「国家防衛戦略」では、中国がインド太平洋地域を支配することがあれば、米国は世界経済の最重要地域へのアクセスを失うという危機感が示されている。第3イメージのような構造に着目する議論は、全体のトレンドを示すことはできるが、個別の具体的な状況における政策決定を説明することはできない。しかし、仮に台湾海峡有事が起こってしまったとすれば、第3イメージからは世界の覇権を巡る戦争であると説明されることになろう。

こうしてみると、3つのイメージすべてで、一定の説得力を持つ形で台湾海峡有事の起こりえる理由を説明できることがわかる。
 

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