5島から12万人を非難させる想定だが…
「防衛白書」では、台湾周辺やバルト海で相次ぐ海底ケーブル損傷を「海洋をめぐる新たな課題」として取り上げている。そして台湾有事の際に、中国側が日本と他国をつなぐ海底ケーブルを狙ってくる可能性もすでに各所で指摘されている。だが、今回台湾が実施したような具体的な訓練が行われたことはないし、住民への情報伝達や空港・港への誘導が機能するかを検証した形跡も公表資料からは確認できない。
台湾有事で真っ先に影響を受けるであろう宮古島や石垣島を含む先島列島からの住民避難については、検討が行われている。国と沖縄県、石垣市、宮古島市、多良間村、竹富町、与那国町の先島5市町村は、2022年度から住民避難を想定した図上訓練(地図等を囲み、対応を検討する形式の訓練)を重ねてきた。
2026年1月29日の国民保護共同図上訓練には、国、沖縄県、先島5市町村のほか、防衛省・自衛隊、海上保安庁、警察、消防、航空・海運事業者など94機関、425人が参加。武力攻撃予測事態の認定に至るかどうか分からない段階で、国が先島諸島からの住民避難が必要となる可能性を判断する状況を設定し、県と市町村を通じた関係機関との調整手順を確認した。
このとき重点課題となったのが、「輸送力の最大化・具体化」と「要配慮者の避難」である。航空機や船舶をどのように確保するのか、高齢者や障害者などをどのように移動させるのか。先島5市町村の住民に観光客などの域外滞在者を加えた約12万人の避難を想定すべく、今年度は図上訓練に加えて実動訓練も予定されている。
日本が台湾の演習から学ぶべきこと
ただ、重要なのは平時と異なる条件下でもそうした計画を実行できるかどうかだ。通信能力が大幅に低下すれば、自治体は住民へ集合場所や出発時間を伝えにくくなる。航空便や船便の予定が変わっても、新しい情報を速やかに周知できない可能性がある。
土地勘の乏しい観光客は、避難場所や空港、港までの経路をスマートフォンに頼ることも多い。高齢者や入院患者の移送では、医療・福祉施設と自治体との連絡も欠かせない。航空機や船舶を確保できても、住民をそこまで誘導できなければ、計画上の輸送力を十分に生かすことはできない。
漢光42号から日本が参考にすべき点は、計画をどこまで厳しい条件で試すかという発想である。台湾は通信速度を通常の約1%まで落とし、自治体、事業者、市民を実際にその環境へ置いた。
日本もすでに先島諸島からの避難の図上訓練を重ねているからこそ、より実地的な段階へと進む必要がある。今後の図上訓練や実動訓練では、通信速度を大幅に低下させる、航空便や船便の一部を利用できなくするなど、前提条件を変化させた状況で避難計画が機能するかを確認することが重要となるだろう。
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