実質賃金の低迷が数十年も止まらない日本

もう1つは、内閣府「国民経済計算」を用いて算出される「時間当たりの実質賃金」である。この指標は、経済全体として、労働1時間当たりいくら支払われたのかを示している。

現金給与に加えて、企業が負担する社会保険料も含まれており、分配構造やマクロ経済の動きを把握するうえで重要な意味を持つ。

ただし、この指標の上昇は、必ずしも家計の可処分所得や生活実感の改善を意味するわけではない。とくに近年は、社会保険料負担の増加が、この指標上では実質賃金の上昇としてあらわれている面もある。

これらの指標を長期にわたってみると、日本では月当たりの実質賃金の低迷が、1997年頃から始まっていることが分かる。

2020年を100とした指数によれば、1990年には103.0であった指数は、1996年には110.2まで上昇したが、その後は上下を繰り返しながら下落に転じていき、2010年には107.5、2024年には97.7となっている。

「名目賃金」は上昇、「実質賃金」は低下

この動きを名目賃金との関係でみると、大きく3つの段階に分けて理解することができる。

第一に、2000年代には、名目賃金と実質賃金がともに低下しており、両者はおおむね同じ方向で動いている。ただし、同時期にはデフレが進行していたため、名目賃金の下落に比べて実質賃金の低下は相対的に緩やかにとどまっている。

第二に、2010年代に入ると、名目賃金は下げ止まり、横ばいで推移する。だが、実質賃金はなおも緩やかな低下を続けるようになる。

そして第三に、近年では名目賃金が上昇に転じる一方で、実質賃金は低下する局面となり、両者の乖離が明確になっている。

オフィスで作業する中年男性
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