デジタル全盛の時代になっても、旅をすることには独特の魅力がある。
実際、物理的に移動してその土地に行くことで得られる情報は、ネットで映像や音声、文字を通して得られるものをはるかに超えている。五感を通して、それぞれの場所に没入することで、脳の深い部分、感情や体に関わる回路を刺激することができるのだ。
とりわけ、旅をしていて現地で口にする食べものや飲みものについては、どれほどテクノロジーが発達しても、味わいや香りといった感覚情報を遠隔地で再現することは難しい。腸において分解、吸収され、体の一部になるプロセスは、そもそもデジタルで再現することが原理的に不可能である。
旅先で口にするものによって整えられる腸内細菌のバランスは、脳腸相関と呼ばれる腸と脳の相互作用を通して脳にも影響を与える。前向きな気持ちや、快活な気分といった心の成り立ちが、旅先で楽しむ食べものを通して整えられるのだ。
ヨーグルトや納豆、食物繊維など、腸内細菌のバランスを整えるのに効果があるとされる食べものはいろいろあるが、最近の研究では、できるだけ多様な食物を口にすることが大切であるとも言われている。
普段生活している中で、できるだけいろいろなものを食べることを心がけると同時に、旅をして、日常では口にしないものを味わうことで、腸内細菌のバランスを整えるために大切な食の多様性を培うことができるのである。
ところで、旅といってもいろいろなかたちがある。家族や友人と行く旅や、旅行会社が募集するツアーなど、現代の旅のあり方はさまざまである。
国際比較で言うと、日本人は一人旅を好む傾向があるとされる。私自身、仕事で国内外いろいろなところに旅をするが、その多くが一人旅である。そして、一人旅には確かにユニークな喜びがあるように思う。
一人旅には、脳科学的に見て、どのような効用があるのだろうか?
一人旅では、基本的に自分でスケジュールをつくって、手配し、実際に移動する必要がある。そのことで、計画を立てたりそれを実行したりする前頭葉の機能が高まる。
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