人工知能(AI)の発展は、目覚ましい。生成AIなどの機能は、もはや人間を凌駕する点もある。

とりわけ、チャットGPTなどの対話型AIが存在感を示している。さまざまなことを調べたり、アイデアを練ったりするときに、AIとやりとりするいわゆる「壁打ち」をする人も多い。

もっとも、この際、「対話型」といっても、声を出して会話するのではなく文字上でのチャットが主流である。生成AIなどとのやりとりは、発話より、文字でのコミュニケーションのほうが増えていくと思われる。

このような時代に、話し方を磨くメリットとは何だろうか? 人工知能の時代に、生身の人間が喋ることの意味について考えてみよう。

脳の発話の特徴は、リアルタイムで情報処理されて、元に戻ることができないことである。

テクストならば、いったん打ち込んだ文字列を推敲したり、編集したりすることができる。生成AIとの対話でも、行きつ戻りつ熟慮して、訂正することができる。

話すときには、そのようなわけにはいかない。いったん口から出た言葉は、過去にさかのぼって取り消すことができない。だからこそ、失言の可能性もあるが、一方で創造性を発揮するチャンスでもある。

意味を扱う脳の側頭葉の「ウェルニッケ野」や、発話の運動制御を扱う前頭葉の「ブローカ野」などの神経回路網の特徴は、自発性、即興性にある。話すことは、あらかじめ全体を計画することが難しい。だからこそ、話すことで創造性が磨かれる。

実際、発話を通して、新しいことを生み出す脳の機能を鍛えることができる。何を話すかをあらかじめ縛りすぎないほうがいい。むしろ、その場で思いつきを口にするほうが、話の内容がイキイキとして、聞き手にとっても面白いのである。

私自身は、大学の授業などでは緻密な資料を用いるけれども、講演の際などには、事前にあまり用意しないで、その場で発想したことを話すようにしている。しばしば、主催者から「投影資料はありますか?」と問い合わせを受けるけれども、「特にありません」と答える。

(写真=iStock)

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