だから高い給与で効率よく働き、子育てしやすい

東京23区では新築マンションの平均価格が1億3000万円~1億6000万円まで上昇し、都心部の2~3億円超の物件は買い手の2~5割が外国人(うち6割が台湾人で、以下、中国人、シンガポール人)ともいわれ、日本でありながら、日本人が買えないといういびつな状況になってきている。

普通のサラリーマン家庭、ましてやこれから子育てをしようという若いカップルにとって、東京の新築マンションなど、とても手が届かない。そのため子づくりを控えたりして、少子化にますます拍車がかかる。

それでも仕事や教育を求めて人が東京(や大阪)に集まるので、建物や人が密集し、ヒートアイランド現象も起きる。逆に地方は過疎化で立ちいかなくなり、せっかくの安い土地や豊かな自然という貴重な資源が活用されず、これまたいびつな状況になっている。

片やドイツやスイスでは、不動産が安い地方に住んでいても、一流の仕事、高度な教育、中央の行政サービスにアクセスできる。広い家に住めるのでストレスを感じることもなく、短い通勤時間で身体への負担が軽減され、プライベートの時間にも余裕ができるので、労働生産性にも差がつき、国全体のGDP(名目)では2023年に人口が3分の2(約8430万人)しかないドイツが日本を追い抜き、直近(2025年)の一人当たりGDPではドイツが6万439ドル(世界18位)に対し日本が3万5973ドル(同38位)と大きく水をあけられ、合計特殊出生率(2024年、世界銀行統計)でもドイツの1.36に対し日本は1.15で後塵を拝している。

スイスに至っては、一人当たりGDPが11万5620ドル(世界第4位)と日本の約3.2倍で、合計特殊出生率は1.29である。

【図表】各国の一人当たりGDP(単位:USドル)と合計特殊出生率(単位:人)
データ出所:一人当たりGDP=IMF、合計特殊出生率=世界銀行

単なる暑さ対策ではなく、日本の救済策である

今はIT技術の発達によってリモートワークができる時代である。英国はコロナ禍の際、先進国でも一番早く2020年12月9日からワクチンの接種を始めたが、10人からなる首相直属の「ワクチン・タスクフォース」の指揮を同年4月からとったケイト・ビンガム氏(女性)は、ほぼずっとウェールズの自然豊かなワイ・ヴァレー(Wye Valley)の家に家族といて、オンラインで仕事をした。

当時、世界に300件程度あったワクチン開発計画の中から有望なものを特定し、第I相・第II相・第III相の各試験(治験)、薬事申請、同承認、製造開始など、研究開発の各段階ごとに「マイルストーン・ペイメント」を行ない、アストラゼネカ、ファイザー、モデルナ、ノヴァックス、ジョンソン・ジョンソンなどから4億5700万回分以上(全人口の約3.4倍分)のワクチンの調達に成功した。日本にたとえるなら木曽の山中にいて、世界中のワクチン・メーカーや関係者とコンタクトをとり、仕事をやり遂げたようなものだ。

ウェールズの自然豊かなワイ・ヴァレー(Wye Valley)
筆者撮影
ウェールズの自然豊かな風景

多極分散型国土は一朝一夕に実現できることではないのは承知しているが、筆者は、都市部の酷暑のみならず、現今の日本のじり貧状態を打開する有力な方策は、各種組織・機能の地方分散であり、ビンガム氏を見習ってIT技術を積極活用し、少しでもそれに近づけるよう努力すべきだと考えている。

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