日本発の「納涼アイテム」が英国で普及

英国とは対照的に、日本は奈良・平安の時代からさまざまな暑さ対策をやってきた。すだれ葦簀よしず、深い軒と縁側、風が通りやすい家の構造、麻の服、氷水、アイスコーヒー、麦茶、冷やし中華、そうめん、水ようかん、ビアガーデン、ハンディファン、ファン付き作業服など、日本に一時帰国するたびに、独自の納涼アイテムを見て感心する。

英国でも、筆者が住み始めた1988年には存在しなかったアイスコーヒーが日本の影響などで2000年くらいから普及し、最近は日本・韓国・中国に旅行した人たちがハンディファンを持ち帰り、広く使われるようになった。おそらくファン付き作業服も今後全世界的に普及するだろう。

ただ日本を見ていて、一つ大きな問題だと思うことがある。それは東京や大阪といった大都市への異様な人口集中と、それがもたらす酷暑だ。「東京は暑いし、滅茶苦茶混雑してるし、もう人間の住むところじゃない!」という嘆きは、都内に住んでいる友人・知人からよく聞く。

ラッシュアワーの山手線のホーム
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筆者のように家も土地も広々とした地方(北海道)出身者から見ると、東京に住みたいとは到底思えない。あえてそこに住む一番の理由は、仕事があるからだろう。仮にそうだとしても定年になったら、地方に帰ればいいと思うのだが、今度は子供たちが東京にいて、孫の顔も見たいからと留まり続ける。子供たちが東京にいるのは、主に高校・大学の選択肢が多いという教育の問題と、その後の就職の選択肢が多いからだ。かくして地方出身者が都会に吹き溜まり、ますます過密化し、酷暑をつくり出している。

ニューヨークよりも昼間人口が激増する東京

ロンドンの証券会社時代の上司だった日本人がニューヨークに駐在していた頃、「ニューヨークっていうのはさあ、住むようなところじゃなくて、金を稼ぎに来るところだよ」と喝破していて、なるほどなあと思ったことがある。元上司がいっていたのは、特にマンハッタンを指してである。

マンハッタンにはセントラル・パークを東西から挟むアッパー・サイドの高級住宅街や、学生や比較的若い層が住むグリニッジ・ビレッジやイースト・ビレッジといった住宅街がある。しかし、夜間の人口(常住人口)が160~170万人であるのに対し、昼間の人口は2.5倍の約400万人に膨れ上がる。まさに「金を稼ぎにやって来るところ」である。

実は東京には、マンハッタンよりも昼間の人口が膨れ上がる場所がある。千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区の5つの区を足したエリアだ。2025年の統計では、夜間人口113万4240人に対し、昼間人口は465万3078人で、実に4.1倍になる。これにより東京都全体の夜間人口が1421万7524人であるのに対し、昼間は1694万1326人に膨れ上がっていて、この5つの区の影響が大きいことがわかる。