もう1つの理由が、採用競争力を強くすること。河本氏はJALがV字型回復を受け、新卒や既卒の採用を始めていることには触れなかったが、そのことも念頭にあるのだろう。もともと、客室乗務員を志す者は双方を受験する傾向がある。ANAとJALで“奪い合い”となる。

JALは現在も契約社員の制度を続ける。ANAとしては「契約社員vs正社員」の構図をつくり、差別化を図ることが、採用力の強化になると考えたのではないか。河本氏は説明する。

「今の大学生の保護者の世代は、正社員になることが多かった時代に育った。わが子が正社員になることを知れば、その会社を好意的にとらえてくださるのではないか、と願った」

一方で、懸念すべきこともある。正社員にすれば、通常はコストが増える。日本の航空会社の大きな課題は、コスト・コントロールだ。河本氏は「教育・訓練、退職者の減少と言った総額人件費という観点から対応する」と答える。

例えば、退職者が減っていくことや、教育・訓練を一層、効率よく進めることができたり、採用業務のコストを減らすことができると考えているという。河本氏が強調する。

「正社員制度を設けることが目的ではない。人材育成や採用力強化の特効薬はないと思う。さまざまな試みをしていく中の、1つが今回の制度導入となる。ユニットコスト(1座席を1キロメートル運ぶのにかかる費用)をはじめとしたコスト改革なども含め、取り組むべきことはいくつもある」