光岡氏は、JALの人事部で新卒などの採用にも関わっていた。優秀な人材を獲得するために、応募者数の20倍ほどのエントリー者数を確保することが必要と指摘する。

「ANAは少子化が進む時代に、1万人以上のエントリー者数を維持することは難しいと判断し、目を引くように“正社員”の道を開いたのではないだろうか」

一方で、ANAが抱える高コスト体質にも触れる。航空会社のコスト競争力の指標であるユニットコストは、ANAは世界の大手航空会社の中でも相当に高く、改革半ばといえる。

光岡氏は今回、正社員雇用を始めることで発生するコストは微増と見る。

「20年ほど前の客室乗務員の平均年収は、ANAやJALは約700万円だった。その後、人事制度の改定などにより、コスト削減を図り、今は450万円ほどになった。すでに人件費の大幅な削減は終えている。現在、契約社員の年収は300万円前後と聞く。正社員として雇う場合、これに50万円ほどを上乗せするかもしれない。1600人いるならば、8億円になる。この数字ならば、大きな負担にはならないと思う」

むしろ、ANAの社風や企業体質について指摘する。光岡氏には、ANAはJALに比べ、仕事には高い水準が求められる傾向があると映るようだ。

「厳しいがゆえに、JALを追い抜くことができた。一方で、定着率が低かったのではないだろうか。そのあたりのハンドリングをどうするか。これを克服しないと、正社員化の効果が弱くなる」

さらには、JALも優秀な人材を獲得するために正社員の雇用を始めるのではないかと予測する。最後に、こう指摘した。

「世界の主な航空会社では、客室乗務員を契約社員にする動きが進む。ANAの試みは、それとは違った方向になる」