このセンターは、テクノロジー産業の拠点である杭州のショッピングモール3階にあり、公立学校に隣接している。生徒たちは通常の授業を終えた後、学力を伸ばすために立ち寄れる。一方、勉強熱心でない生徒たちは、1階のゲームセンターで時間を過ごしている。教室内にいる大人は一人だけで、システムの不具合や困り事が起きたときに生徒を助ける。仕事はそれほど多くない。

18歳のワン・ユーチェンは、AIを使った学習によって学校の成績が大きく向上したという。

「システムが私個人に合わせて分析してくれるので、試験に必要なポイントをもっと効率よく学べる」と、ワンは語った。

「間違えると、そのポイントをきちんと理解できるように、続けて問題を出してくれる。間違いに関連した動画も表示され、それを見ることで理解を深められる」

この技術は、生徒の学習状況を細かく把握し、その時点で必要なものを正確に与える仕組みだとリーは説明する。動画が適している生徒もいれば、漫画のほうが効果的な生徒もいる。理解に苦しんでいる場合は、概念をつかめるまで、1学年かそれ以上前の教材に戻る。各問題に平均的な生徒が答えるまでの時間も把握しているため、集中力が落ちている兆候を見つけ、それに応じて内容を調整できる。

「学習状況は1時間単位だけでなく、10分単位でも評価できる」とリーは言う。

「一人一人がきちんと学べているか、私たちの学習方法や指導技術、アルゴリズムが適切かを評価する。その結果を基に、よりよいものへと進化させていく」

中国発AI塾はアメリカに受け入れられるか? 創業者が語る「勝算」

教材は教師がそれぞれのカリキュラムに合わせて開発している。幅広い用途に使われるため誤りを犯すこともあるChatGPTやグーグルのGeminiのような大規模言語モデルではなく、独自のAIモデルを採用している。スクワレルAIの利用者は、中国にいる2億人を超える児童・生徒の一部にすぎない。それでも、システムを改善するのに十分な量のデータを蓄積している。

「どの子供も100点満点で90点を取れるようになる」とリーは言う。「例えば私の息子2人は、小学2年生の時に小学4年生の算数を終え、小学3年生の時には中学2年生の物理と科学を終えた」。双子の息子たちは現在、学校には通わず、このプラットフォームで学科の勉強をしているという。

中国では、ほかの企業も教育へのAI導入を進めている。アイフライテックは教師と生徒を支援するシステムを数千校に提供し、従来型の学校グループでも授業にAIを取り入れる動きが広がっている。

スクワレルAIは現在、アメリカ進出を計画しており、この夏にも現地初の学習センターを開設したい考えだ。世界最大の学習塾ネットワークである日本の公文など、ほかの補習教育事業者と競うことになる。

リーは、ファーウェイやTikTokなどの中国テクノロジー企業が、国家安全保障上の疑念を理由にアメリカで厳しい目を向けられてきたことを認める。一方、スクワレルAIのアメリカ法人は中国法人とは完全に切り離して設立され、最大株主はアメリカのヘッジファンドだと説明した。

アメリカから中国にデータが送られることはない、とリーは言う。実際、中国版の開発でさえ、アメリカのAI研究者の専門知識に頼ってきたとも付け加えた。

「もちろん最近の米中関係は多少微妙だが、私たちの事業はそれほど敏感な分野ではない」とリーは言う。

「生徒に中国語や中国文化を教えるわけではない。扱うのは算数や読解といった科目だけだ。イデオロギーとは関係がなく、はるかに問題になりにくい」

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
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