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「内部留保=現預金」ではない

たとえば、ソフトバンクの2013年3月期のB/Sでは、利益剰余金が7536億1600万円なのに対して、現預金は1兆3691億3400万円ある。では、その利益剰余金がまるまる現預金に回っているかというと、決してそんなことはないはずで、土地であったり、通信機器であったり、事業の発展に資する資産に回されている可能性が高いのである。

内部留保という字面から、「現金でストックされている」と思いがちだが、「内部留保=現預金」ではないことに注意しておきたい。大手新聞の紙面でも「内部留保=現預金」という前提で書かれている記事をときどき見かけるが、会計理論的には思い違いによるものなのだ。

また、内部留保が多いと企業が余剰資金をたくさん抱えているような印象を持つかもしれない。でも、それも間違いである。

そもそも純資産は会社の自己資本であり、株主の取り分なのだ。しかし、利益剰余金を後生大事に現預金としてしまっておくのではなく、先ほども触れたように設備投資などに回せば、さらなる成長を遂げて利益が増えることが期待でき、株主も決して反対はしない。

内部留保を取り崩せば従業員の給料を増やせる、などと主張する人もいるが、そう簡単な話ではない。利益剰余金はあくまでも株主に帰属するもので、どう使うかは株主から見た投資効率の基準で判断されるからだ。

当然のことだが、利益剰余金が多いということは、会社が自ら稼いだお金が多いことを意味する。さらに、利益剰余金の増加は純資産の増加につながるため、自己資本が厚くなって財務の健全性を高める効果もある。

もし企業の姿勢を批判するのなら、積み上がった現預金の額と使い方を議論すべきだ。日本銀行の資金循環統計によると、13年6月末時点でのそれは、名目国内総生産の半分に迫る220兆円もあるのだから。しかし、この額が内部留保とイコールでないことを覚えておこう。