リサイクル業者が次々廃業
“言うは易く行うは難し”ということわざがあるが、EUでこれまで資源ごみのリサイクルが進まず、中国やマレーシアにそれを輸出していたのには明確な理由がある。それはEU域内でのリサイクルコストが高く、プラスチックなど包装材を輸入したほうが安上がりだったからだ。要するに、EUではリサイクル事業が儲からないのである。
現にEUでは、リサイクル業者の廃業が相次いでいる。業界団体であるプラスチック・リサイクラーズ・ヨーロッパ(PRE)が2025年11月に発表した報告書によると、それまでの原油価格の下落を受けて欧州のプラスチックリサイクル業者の多くが廃業に追い込まれ、プラスチックのリサイクル能力が大幅に低下する事態となったようだ。
こうした中でリサイクルの割合を高めることなど不可能だ。まずはリサイクル事業が儲かるようなビジネスフローを、EUが主体となって構築する必要がある。それに、包装材を作る企業、使う企業のいずれにも対応が迫られる。さらに包装材を最終的に処理する消費者が、企業がリサイクルしやすいようにごみの出し方を変えなければならない。
つまりはリサイクルのための新たな“エコシステム”を構築する必要があるわけだが、それには当然ながら莫大な時間的・金銭的なコストがかかる。そのための費用を起債で賄うにせよ増税で賄うにせよ、企業や家計へのコスト転嫁は回避しがたい。リサイクルのためのエコシステムができる頃には、EUの国際競争力はさらに低下しそうだ。
リサイクルに関しては現実的な解決策がなかなか見出しにくいため、基本的には包装材の利用を削減することで、そもそもの資源ごみの排出を減らすことが肝要だろう。要するに、包装材の生産に用いる原材料を削減するわけだ。一定の数値目標を定めるとして、それを達成した企業に減税などのインセンティブを与える方が有効ではないか。
曖昧な運用に左右される企業
PPWRの運用は段階的に行われる。皮切りとなるのは、食品の包装材で使用される有機フッ素化合物(PFAS)への規制だ。耐油性や耐水性を高めるコーティング剤として食品容器に使われていたPFASだが、自然界でほとんど分解されない物質でもあり、人体への悪影響が懸念されており、日本を含めて世界的に利用が制限されている。
こうした規制には合理性が見出せるが、今年の末にはプラスチック包装材に占めるリサイクル材の最低含有率を定める規制が適用される運びである。以降も様々な規制の強化が実施される予定だが、EUの情報公開は不十分であるという指摘も多いようだ。日系企業も対応に苦慮しており、日本貿易振興機構(JETRO)が支援している。
EUはEUで、これまでの規制運営の経験もあり、実際の進捗に応じて規制を強化あるいは緩和できるよう、情報を小出しにしているのかもしれない。かつて掲げた2035年を目標とする新車の電気自動車(EV)シフト目標のように、高過ぎる球を投げたところで、それが実現できなければ、国際的な影響力が後退しかねないからだろう。

