数の力で押し切った

ところが、何のために全体会議が行われたのか、理解できていない政治家もいたようだ。失礼ながら、高市早苗首相自身もその一人ではあるまいか。全党派に呼びかける立場にあった森英介衆院議長からして、全会一致に水を差すような発言が見られた。5月15日の記者会見で「全党の賛同を得るのは不可能」などと先回りして述べていた。

結局、全13党派が集まった中で、議長らの取りまとめ案に賛成したのは7党派にとどまる惨状を呈した。およそ「立法府の総意」からほど遠い。

しかも政府は、その「議長らの取りまとめ」では合意が得られず、あえて保留していた事項について、内親王・女王の配偶者やお子さまを国民にするとか、養子の子に皇位継承資格を認めるなどと、勝手に書き込んだ改正案を作った。野党の一部からは「騙し討ち」とまで非難された。その結果、衆院でも参院でも、皇室典範という特別な法律の改正にふさわしくない、「全会一致」とはかけ離れた、数の力だけに頼った単なる多数決(少数派の切り捨て)に堕してしまった。

参議院では、立憲民主党の長浜博行議員が「良識の府と言われた参院で、80年の歴史をもつ皇室典範がわずか数時間の審議で改悪されることを想像すると、断腸の思いだ」と懸念を表明した。投票総数241のうち反対が57にも達した。

政府のゴリ押しによって、皇室を規律する典範それ自体の法的権威が大きく損なわれたのは、残念だ。

高市早苗首相。2026年2月18日撮影
高市早苗首相。2026年2月18日撮影(写真=首相官邸/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

旧宮家子孫は“赤の他人”の民間人

今回の皇室典範の改正をどう評価するか。

まったく無駄な空振りに終わるか、それとも現実を致命的に悪い方向に変えるか。そのどちらかだろう。

前者なら、次世代の皇位継承資格者がお一方だけという皇室が直面する危機を、さらに深める結果になる。後者なら、皇室をこれまでと“異質な存在”へと塗り替えてしまう。どちらに転んでも最悪だ。

今回の改正によって、いわゆる旧宮家系の民間男性を皇族との養子縁組で「養子皇族男子」とする、皇室の「聖域」性を危うくしかねない、まったく前例のない制度を採用した。これが現実的に機能するか、どうか。

この養子縁組が成り立つには、当たり前ながら「養子」になろうとする民間人と、その民間人を皇室に迎えようとする、つまり「養親」になられる皇族との、両者の意思が合致する必要がある。

改正典範では旧宮家系の未婚で15歳以上の男子が養子の候補とされた。その対象者は、天皇陛下から男系の血縁が36親等〜38親等も離れた元皇族の、さらに孫や曾孫にあたる。だから血縁はさらに2〜3親等もより遠くなる。まさしく「赤の他人」だ。

しかも被占領下の事情に関係なく、もともと大正9年(1920年)に制定された皇室の内規「皇族の降下に関する準則」を当てはめると、過去の天皇からの血縁の遠さゆえに、生まれた時から一般国民の人たちだ。