暴排条例以降現れた“神待ち少女”
外国人の立ちんぼの街だった歌舞伎町の姿が大きく変わるきっかけが、1992年の暴力団対策法の施行です。その後、石原慎太郎都知事時代の2003年から「歌舞伎町浄化作戦」がスタートし、100台以上の監視カメラが設置され、街から外国人を排除していきました。そして決定的だったのが、暴排条例です。
それまでは二つの暴力団が組織的に歌舞伎町の立ちんぼのコミュニティを束ねて、ある意味では秩序を維持していました。それが暴排条例以降、ヤクザが組織として動けなくなり、コミュニティが崩壊してしまった。
暴排条例前後に外国人の立ちんぼに代わって現れたのが、“神待ち少女”です。家出をして居場所がない若い女性が、SNSを通して食事や宿泊場所を提供してくれる“神”を待つ。神待ち少女は売春の温床になりました。
実際に街に立つ神待ち少女は数としては少なかったかもしれません。ただし、ヤクザの目が届かないところで、売春が行われるようになった。ヤクザの管理外でフリーの売春婦が稼ぐという点では、現在の立ちんぼの走りと言えるかもしれません。
歴史を振り返ってみても、日本ではフリーの立ちんぼはいなかった。戦後間もない混乱期の新宿では、甲州街道沿いに日本人女性の立ちんぼが立っていたそうですが、ヤクザが仕切っていました。ほかの国を見ても、立ちんぼや組織的な売春は裏社会の顔役やアウトローが仕切っています。そうした状況を踏まえると、現在の歌舞伎町の立ちんぼはこれまでにない存在です。
買う男がいるから彼女たちは立っている
――暴排条例によってヤクザが力を奪われた影響で、歌舞伎町でアマチュア化が進んだわけですね。
性風俗でいえば、吉原のソープランドで働く女性は店で決められたサービスを提供し、接客技術を求められるプロです。女性たちは店に所属し、客が支払う料金の30~40%ほどしか受け取れません。しかしトラブルなどがあればケツ持ちのヤクザが仲介するので、フリーの立ちんぼに比べて身の安全が守られる。
一方で、歌舞伎町の立ちんぼの相場はホテル代別で1万5000円。店を通したら取り分は5000円程度のところを、まるまる手にできる。その反面、誰も守ってくれないハイリスク・ハイリターンの稼ぎ方です。
歌舞伎町の立ちんぼが稼ぐ動機のほとんどが、ホストクラブへのツケ払いである「売り掛け」か、メンズ地下アイドルへの「推し活」です。売り掛けや推し活代が月300万円を超える女性も少なくありません。だからハイリスク・ハイリターンの立ちんぼを選択せざるをえないという事情があります。
そしてリスクの中には警察に逮捕される可能性も含まれます。立ちんぼの摘発は、たびたびメディアで取り上げられます。しかし見方を変えれば、買う男性がいるから、彼女たちは歌舞伎町に立っているわけです。本来は買う男性側も取り締まりの対象にすべきです。

