開発に5年、富裕層を呼び込むはずが…
ロブ・リポートによると、シンダラ島は約3万人の作業員が5年をかけて開発を進めた。サウジアラビア国営のサウジ通信社によるとその面積は約84ヘクタールで、東京ドーム約18個分、あるいは明治神宮より一回り大きい程度の規模感である。
富豪のスーパーヨットを迎えられるマリーナを整備し、高級ホテルを複数備えた島で休暇を過ごしてもらう算段だった。スーパーヨットはいわば動く豪邸といった大型船であり、宿泊機能を備えるほか、常時専任のクルーたちが乗り込む。各界の成功者が所有するこうした船で、そのまま島に乗り付けてもらう構想だ。
全長170キロの超高層直線都市「ザ・ライン」や砂漠の山岳スキーリゾート「トロジェナ」といった構想を抱えるネオムにとって、最も易しい部類のプロジェクトとなるはずだった。ウォール・ストリート・ジャーナル紙もシンダラを「比較的シンプルな低層開発」と表現している。
米独立系ニュースメディアのセマフォーが伝えるところでは、この島はネオムの潜在力を世界に示し、プロジェクト全体が前進していることを懐疑派に証明するための「ショーケース」として位置づけられていたという。
しかし、その「比較的シンプル」なシンダラですら、予算は当初想定の約3倍に膨れ上がり、工期は3年以上遅れた。ネオムの未来は明るいと証明するはずの島が、皮肉にも、やはり計画に無理があったことを雄弁に証明してしまった形だ。
着工前の調査不足が招いた致命傷
スーパーヨットの新たな聖地として計画された島には、致命的な見落としがあった。
サウジ通信社はかつて、「戦略的な立地と一年を通じて心地よい気候」を備えた島と紹介した。86隻を係留できる最新鋭のマリーナが、「セーリングの新たな季節を切り拓く」とも高らかに謳っていた。
ところが、実際にはシンダラのマリーナには一年の大半にわたって波が入り込み、係留された船を絶えず揺らし続ける。ロイター通信が関係者の証言として伝えたところでは、島はたびたび強風にも見舞われるが、着工前の調査が不十分だったため、風の影響を設計に十分織り込んでいなかったという。
あの祝祭の夜、フェリーの到着とゴルフの進行を狂わせた風。それは決して偶然のハプニングというわけではなく、この島が決して逃れることのできない気候条件だった。富豪のスーパーヨットを呼び込むマリーナを設けておきながら、肝心のスーパーヨットが穏やかに停泊することすら許されない、致命的な痛手だ。
同じアカバ湾の対岸に位置するダハブやエイラートは、絶え間ない風ゆえにウインドサーフィンの世界的な聖地として知られる。サウジは、風を嫌うヨットの楽園を、よりによって風を求める者たちが集う海に造ろうとしていた。

