フジは結局、俳優たちに謝罪した
結局、7月7日に出した2回目の文書では、男性俳優・女性俳優に対して「お詫び申し上げます」と記載することになりました。厳重注意をしたはずの佐藤二朗さんにも詫びている。文字だけでたどっていっても、これはねじれています。最初の報道発表で言うべきだったお詫びを、批判を浴びてから後出しするという“順番の間違い”が、事態をここまでこじらせた大きな要因だと思います。
対比として分かりやすいのが日本テレビの例です。2025年、日本テレビが国分太一さんを「コンプライアンス違反」を理由として人気番組「ザ!鉄腕!DASH‼」などから降板させた件では、週刊誌に記事が出る前に社長が自ら会見し、先行して発表しました。もっとも、日本テレビの対応にも問題はありました。「違反」の中身を明かさないまま一方的に断罪した点は、私も繰り返し批判してきました。当事者への十分な配慮と必要な情報公開のバランスは常に問われるべきです。それでも「先手を打って自ら説明した」という一点において、報道の後追いになってしまったフジテレビよりはマシでした。
文春などのスクープ記事では掲載前に必ず取材や通告をしてくるものです。今回もフジテレビの掲載中止の申し入れにもかかわらず記事が掲載されたことが「遺憾」だったとコメントしており、対策する時間はあったはずです。1回目の報道発表を出す前に、やるべきことはあったでしょう。例えば、フジテレビの清水賢治社長が文春オンラインの公開より早く会見を開くことだってできたはずです。
現場に「包み込む」力があったか
私はMBS(毎日放送)で15年半、制作と編成の畑を歩いてきました。20代の頃はドラマ担当のアシスタントディレクター、アシスタントプロデューサーでした。現場では大御所女優さんが撮影初日に楽屋で怒って「もう帰る」と言い出したり、売れっ子の俳優が本番でもセリフが入っていないなど、トラブルの連続。そんなことは日常茶飯事でした。そもそも俳優さんというのは、一国一城の主です。スタッフがその間に入り込み、時に泣かされながらも信頼関係を築いて一つひとつ乗り越えていく。それが私たちの仕事でした。
今回の現場はどうだったか。佐藤さんは劇団を主宰し、映画監督も務めてきた方です。座組のリーダーとして振る舞うことが染みついたタイプなのでしょう。初回の放送を見て感動し、その足で橋本さんの楽屋を訪ねた、という前段があるくらいですから、ご本人としてはコミュニケーションを重ねて作品をプラスに持っていこうとしていたのだと思います。一方の橋本さん側には、それが到底受け入れられないものだった。この溝を埋めるのは当事者同士では無理です。だからこそスタッフの出番なのです。

