「ここで逃したら大変なことになる」

磯氏は「撃ちやすい場所を自分で探してもいいですか」と申し出ると、しばらくの間現場周辺をくまなくチェックし、民家の裏に建つアパートの駐車場から、フェンス越しに狙うことにした。そこからも身体全体が見えたわけではない。だが、クマの胸にある「白い月の輪模様」は見えた。

「ここで逃したら大変なことになるという重圧もあったし、とにかく必死でした。恐怖心? それは全然なかったですね。警察の方も盾で守ってくれてたので」

距離は約5メートル。フェンスに銃を突っ込み、狙いを定めて撃った3発目は、クマの月の輪に命中した。5分ほどでクマは眠りに落ち、猟友会が用意した檻に収容された。時刻は6月9日15時45分。駆除されたクマはオスの成獣で、体長は推定で約1.4メートル、体重は80キロを超えていた。

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2026年8月号)
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