なかなか痛快な小説だ。今までのイメージを大きくくつがえして登場する若き明智光秀。そして、その光秀と不思議な出会いをする僧侶・愚息と兵法者・新九郎。この3人を軸に物語が展開する。愚息のキャラクターがいい。ほとんど主人公といってもいいような存在感だ。

著者、垣根涼介の出世作『ワイルド・ソウル』は汗と熱気が読者にダイレクトに伝わる快作だった。その垣根涼介が歴史小説というのは、かなり驚きではあった。垣根涼介も枯れたのか? と思ったのだが、読み進めていくうちに、それは杞憂だったとすぐわかる。この3人の躍動感、存在感は熱気を持って読者にすぐ伝わってくる。僧侶・愚息の独特のポリシーは、読者に十分な痛快感を与えてくれる。

残念ながら、後半少し疾走感が落ちる。それは、明智光秀が本能寺の変を引き起こした歴史的事実によるものだ。著者は、その光秀像を何とかくつがえそうと苦心する。もしかすると、著者がこの本で訴えたかったのは、この部分なのかもしれない。それは十分説得的に読者に伝わるのだが、その分物語の流れが少し滞る。その点が少し残念ではあった。けれども、それを十分に補って余りある、新しい光秀像と魅力的な登場人物が躍動する物語だ。

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