振り込め詐欺が初めてマスコミに取り上げられた当時、ある警察高官は「放っておけば日本社会がめちゃくちゃになる」とコメントしていた。窮地に陥った肉親のふりをして老人に電話をかけて現金を騙し取るという非情な手法が、日本人の心を根底から危うくしかねないのだと、警察の幹部たちは素早く察知したのだ。
振り込め詐欺は、それほどの破壊力を秘めているのだ。何といっても、現代の日本人の心性に精通しつつ、それを金のために踏みにじることを躊躇しない。いったいどんな人間が実行犯なのか、被害者はどうやって選ばれるのか、あるいは誰が詐欺話の筋書きを練っているのか等々非常に気になっていたし、設定を次々と変えつつ、同種の電話越しの詐欺が後を絶たないことも不思議だった。
本書はそうした疑問の数々に、明快かつ丁寧に答えてくれる1冊だ。著者は、世間的には「不良」と一括されるであろう少年少女の生を追いかける傑作ルポを、すでに何冊か著している。振り込め詐欺も、実行犯の多くが若者なので、著者の取材の網に引っ掛かったことが本書の執筆の発端なのだろう。
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